プラザアテネで「アラン・デュカス」を満喫するパリの夜

前回に続き、今回は「ホテル・プラザ・アテネ」のレストランの話。ホテルのエントランスロビーを通り抜けて、突き当たり正面フォークとナイフを持ったオブジェが印象的。そこがミシュラン三ツ星「アラン・デュカス オ プラザ・アテネ」の入り口だ。
予約した20時に伺うと、既にぽつぽつと先客がいる。グラス・シャンパーニュは、5~6種類のシャンパーニュを冷やした豪華なシャンパーニュワゴンの中から選べる。店内の赤い絨毯や椅子と色合わせした妻のロングドレスに、更に合わせてロゼをチョイスする。若いソムリエもサービスしながら「ドレスとピッタリですね」と褒めてくれた。このような贅沢な選択が可能なところが、グランメゾンの楽しさの一つだ。
メニューはテーブルに立てかけられるので非常に見やすい。天井からはスワロフスキー製シャンデリアが美しく輝く。インテリアは全体的にモダンで洗練されていて、落着いた雰囲気。注文が終わるとチーフソムリエが笑顔でやってくる。「アラン・デュカス」では、ソムリエが注文したプレートに合わせたワインを強く勧めることで有名。そこで敢えて、こちらの希望を伝えてみる事にした。
リヴァロ「白は、ルロワのコルトン・シャルルマーニュ2000でいこうと思うんだが。」
ソムリエ「おお、だけど、最初から飲むには胃に強すぎると思います。それにチョイスした肉には合わない。」
リヴァロ「いや、肉には赤ワインを別に頼むよ。妻がアニョ・ロティだから定番のポイヤックで。私の小鳩にも合うように優しい味わいのシャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ドゥ・ラランド2002のデミボトル(180ユーロ)を考えているんだが。」 そのソムリエは笑顔でちょっと考える・・
ソムリエ「OK。ワインリストには載せていないんだけど、デュクリュ・ボーカイユ2000年のデミボトル(250ユーロ)がある。最近飲んだけど抜群なんですよ。サンジュリアンだけどアニョ・ロティにも十分合う。」
「それから白は、M Niellonのシュバリエ・モンラッシェの96年はどうだろう(480ユーロ)。飲み頃で今日の料理にも合うし、あなたがチョイスしたルロワ(580ユーロ)より若干お手頃だと思いますよ。」
非常にスマートな勧め方だ。デュクリュ・ボーカイユの大好きな妻が大喜びで「トレビアン♪」を連発すると、空を見上げて鼻高々なリアクション。他のスタッフも一緒になって、テーブルが笑いに包まれる。
「ルレ・ベルナール・ロワゾー」のソムリエは、私のチョイスに対して「素晴らしい選択ですね。おいしいし合うと思います」と笑顔でリップサービスし気持ちよく飲ませてくれた。一方、「アラン・デュカス」のソムリエは「あなたのチョイスは、こうこうの理由で僕はこちらがいいと思う」と言ってくる。客の選ぶワインはどうしても自分の能力内にとどまり、発見や驚きが乏しくなりがちだ。その意味で責任もってワインを勧めてくるアラン・デュカスのソムリエのポリシー、そして経験と知識に裏付けられた自信には感心させられた。
1品目は、妻が「キャビア・オシェトラ」のデミサイズを。ほのかに火を入れたラングスティーヌの上に、宝石のようにキャビアが敷き詰められている。アラン・デュカスのスペシャリテの一つだ。ギュと凝縮された甲殻類の甘味と旨みが、キャビアの塩味と風味と交じり合う。
私のチョイスした舌平目は、プリッとして食感を残した絶妙な火入れだ。ふっくらとした身質は少し力を入れないと切れないのだが、口の中に入れると柔らかくほぐれ溶けていくイメージ。付け合せの貝類にパセリのソースの風味。日本人にはなじみのある味わいのおいしさだ。ソムリエのチョイスしてくれたシュバリエ・モンラッシェとのハーモニーを堪能する。
そして時間と共に照明が落とされて、レストランのざわめき会話も皆弾んでくるのが分かる。ワインもすすみ晩餐が盛り上がって、いよいよメインの料理の登場となる。
妻のチョイスした「アニョ・ロティ」は、火を入れた片手鍋をテーブルまで持ってきて、その場で切り分けてくれる。ロゼ色を残したとても綺麗な火入れだ。子羊の色々な部位が切り分けられており、かみ締めるうちに子羊独特の風味が鼻に抜けてくる。まだまだ力強いタンニンのデュクリュ・ボーカイユにぴったりだった。
私の「ピジョノー」は、日本ではあまりお目にかかれない肉厚に圧倒される。溶かしバターでパン粉をまぶした上で、じっくりと火が入れられている。分厚い肉を口いっぱいに頬ばり噛み締めると、小鳩の優しい鉄分の風味が鼻に広がる。りんごのゴーフレットがちょっとしたアクセントで楽しい。
肉まで味わったところでお楽しみのデザートタイム。ここアラン・デュカスでは「クープ・デュ・モンド・デュ・パディスリー」で優勝したパティシエの芸術的なデザートが楽しめる。
「フランボワーズ」はとても新鮮で酸味があふれでている。それに甘いソースがかけられ、甘味・酸味・果実実が渾然一体となる構成だ。色んなパターンが盛りだくさんで出てくるので、とても全ては食べつくせない。
バーブティーも合わせてチョイスしてもらい、豪華で美味しい。「ババ」にはラムの香り華やかに、たっぷりのクリームが添えられ、更に一杯のラム酒が添えられる。ワインと料理を堪能した後に、食後酒的にデザートを頂く趣向で男性には嬉しい。
なお「サロン・ド・テ」で出しているパティスリーは、ホテルのロビーに芸術品のように「季節のコレクション」として、ショーケースにライトアップして飾られている。その中にある、期間限定の「星座モチーフ」の大きなチョコレートを頂いたので、妻は大喜びで大切に日本に持ち帰った。かなり分厚い板チョコだが美味しくてあっという間なくなったのは言うまでもない。
フランスの3ツ星グランメゾンとはこうあるべきという姿、「卓越した料理」「優雅なサービス」「洗練さと重厚感」を心地よく味わえた満足の一夜だった。もちろんまた来たい素敵なレストランだ。
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