盛夏、江戸前鮨で楽しめ! 「かねさか」「しみづ」

まずは銀座にある「鮨かねさか」。建物入口に分かりやすい表示があるが、実際の入口は地下で狭い階段をぐるぐる降りて行く。
店内もかなり狭く、入ってすぐのカウンター、左奥にずずっとまわったカウンターに分かれている。従業員の行き来もし辛い程のギリギリのスペースという感じ。必然、握り手に正対しない客が多くなり、座った席によっては違和感がある。ただ職人の仕事ぶりなどは横や後ろからよく見える事になる。
和でありながらモダンなデザインを意識して造られている内装。簾風の天井と飾られた緑が涼しげに合う。店入口右奥には寿司屋らしからぬ、赤いソファの小さなボックス席がある。
握りをお任せでお願いした。白身から始まり、トロを前半の山に持ってきて、こはだを境に後半がスタートしての山場というオーソドックスな、いわゆる「次郎流れ」で20貫弱。
白身は「まこがれい」「ほしがれい」。この時期、「まこ」を握る店は多いが、高級な「ほし」まで持ってくるところに素材に対するこだわりを感じる。しゃりは人肌よりやや温かい。塩がかなり強いため、食事初め、かつ、白身だとポンと浮く感じだ。
続いて「中トロ」「大トロ」「づけ」。佐渡のまぐろは普通。
「すみいか」「コハダ」。コハダはかなり強い締め。強いシャリとは合うのかもしれない。「かつお」「あじ」には葱たたきをポンと載せている。「キスこぶ締め」、「白うお」にはカボス。
「車海老」はミソもあわせて。クリーミーなゆで加減。東京ミシュランが二つ星つけたのはこのあたりもあるだろう。フランスのフレンチは概していずれも塩がかなり強い。そしてラングスティーヌのサラダなど、トロリとした甘味を出した前菜も多い(日本人フレンチシェフだときちんと綺麗な火入れをしてしまいがち)。そんなフレンチ本場テイストを感じる車海老。
「はまぐり」。ツメを合わせない仕上がりだが、とてもジューシーではまぐり特有の旨み。「うに」「あなご」は塩とタレ。久兵衛譲り。巻物は「トロ」と「かんぴょう」。卵はとてもクリーミー。
ワインリストにはシャンパーニュ、白、赤の定番ものをそろえている。例えば、シャンパーニュは補糖しないリンとした酸味と辛味が和食にもあわせやすいローラン・ペリエを持ってきている。ワインクラースタンドも用意してある。
客あしらいも久兵衛出身だけにそつがない。握りはやはり久兵衛らしい、悪くいえば「ゆるい」、よくいえば「やさしい」握り。
ハラリとしたシャリとネタの融合を目指す握りではなく、いわゆる、ネタとジュワッとした一体感を目指す握り。付け台から指で持ち上げる時に折れてしまう事もあった。
ミシュランの一つのパターンは、定評あるベテランないし著名店出身の若手に目をつけるもの。
「かねさか」も、「鮨さいとう」(旧かねさか赤坂店)も、そのパターンで星を貰ったものだが、日本人の寿司基準からするとまだまだこれから。若手の範疇を越えないし、同レベルの寿司屋はいくつもある。
続いて新橋にある「鮨処 しみづ」。やはりを握りをお任せでお願いする。
「かれい」。白身王国九州でも通用する素晴らしいかれいだった。人肌で力強いシャリはハラリと口のなかでほどけていく。「イカ」「キス」「トロ」「アジ」「コハダ」。コハダのシメもかなり強いのは、塩ではなく酢(酸)がツンとたったシャリとバランスをあわせているからだろう。
ただし、女性や寿司をあまり食べこんでない食べ手には、かなり「酸」が強く、違和感を感じる向きもあるかもしれない。
「車海老」「小柱」「鮑」「ウニ」「あなご」「卵」で一通り。赤貝とハマグリを追加で頂く。ハマグリはやや小ぶりだがトロリとしたツメは新橋鶴八譲り。
大振りで人肌の車海老の甲殻類の香りと甘味、小柱やウニ軍艦の海苔の磯の風味、もしくはアナゴやハマグリの甘いツメがあると、それら甘味・旨みとシャリの酸がバランスが綺麗にとれておいしかった。
握りとしては個性が強いが、完成度も高い「男前の握り」。主人、若手も胸をはり、毅然と淡々と目の前の仕事に向かい合っている。そんなけれんみが感じられる、江戸前の伝統を引き継ぐ色気ある寿司屋である。
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