エノテーカ・ピンキオーリ フィレンツェ本店、驚愕の「ワインコース6」を堪能する
歴史の香りがそのまま現代に流れ込んでいるフィレンツェの街。秋の涼しい風と色付く木々に見とれながら、細い道をくねくね車で向かう先は「エノテーカ・ピンキオーリ フィレンツェ本店(Ristorante Enoteca Pinchiorri Firenze)」。イタリアで最も美味しいレストランさ!と宿泊先「フォーシーズンズホテル フィレンツェ」のドアマンも自慢するほどの名店。

ウェイティングルームは、赤やピンクでまさに女性好みの「カワイイ」インテリア。キレのいいサービスの女性がフロアーに案内してくれる。イタリアでは珍しく良い意味での緊張感があり、さすが三ツ星という雰囲気を醸し出している。
ここ「エノテーカ・ピンキオーリ フィレンツェ」では、4万500本を越えるという垂涎のワインも楽しみの一つだ。本店まで来て普通に頼んでもおもしろくない。そこでグラス売りのワインコースの中からチョイスすることにした(なおグラス売りだが数杯ついでくれる)。

目にとまったコースは、「アミオのモンラッシェ1996年」「ソライア1990年」「ラスカーズ1990年」「マルゴー1990年」、そしてアンリ・ジャイエの「ヴォーヌ・ロマネ・ボーモン1990年」に「ペトリュス1990年」という、そうそうたるラインナップだった。さすがに一瞬躊躇する値段だったが(2人で9000€ この時1€=150円超)、ここまでのワインをまとめて飲む機会はそうないだろうと意を決して注文。これが大正解だった。
「モンラッシェ(AMIOT Montrachet)1996年」は黄金色の輝きにとろけるような舌触り。重々しい味わいにシャルドネのミネラルの深い余韻が広がる。そして、本日のラインナップの中で唯一のイタリアワイン「アンティノリのソライア(ANTINORI Solaia)」。トスカーナ、特にボルゲリのカベルネは、樽の強いタンニンが強調されていて余り得意ではない。このソライアはサンジョベーゼとさすがのバランス。飲みやすいんだがふくよかで気品がある。今日のエノテカ・ピンキオーリの料理とのマリアージュだけを考えれば、むしろソライア1本で通した方が良かった位だった。
「シャトー・レオヴィル・ラスカーズ(Chateau Leoville Las Cases)1990年」。他のワインは全て私達のために開栓したボトルだったが、これだけは既に開けられたボトルだった。くぐもった動物の毛、枯葉、腐葉土の香りというムッとこもった熟成香。タンニンは綺麗にとけ込み酸とのバランスが抜群だ。サンジュリアンの素晴らしいワインの前半戦(20年目)の一つの到達点・・・という味わいだった。
妻のお目当ての「シャトー・マルゴー(Château Margaux)1990年」。これまでに飲んだマルゴーは10年以内と若かったためまだまだ強いタンニンにあまり感銘を受けなかった。が、18年を迎えたこのマルゴーは先程の「ラスカーズ」以上に抜群だった!
薄いルビー色は見るからにエキスが凝縮された感じ。鼻を近づけるとフワーッと香水のような華やかな香りが立ちこめる。ワインにとけ込みシルクのようなタンニンは柔らかくフレッシュでとてもみずみずしい、しばらくすると杏のような香りが出てくるが、しかしそこで枯れず、さらに別の複雑な香りと味わいが次々と波のように展開していく。上品で綺麗な酸と、果実とタンニンが極上の味わいを表現してくれた。本日のコースで一番のワインだった。担当していた若く美男な主任ソムリエも「僕が一番好きなエレガントな味わいです」と誇らしげだった。
「アンリ・ジャイエ(Henri Jayer) ヴォーヌ・ロマネ・ボーモン(Vosne Romanee Beaumonts)1990年」。アンリ・ジャイエはこれまで飲む機会に恵まれず今回初めて味わった。「このビンテージのジェイエのボーモンは、私もまだテイスティングしていないんですよ」とソムリエもなんだが嬉しそうに開けている。
なるほど、ブドウの茎・植物の青臭さが全面に広がる。その独特の香りが、口に含んだ時に感じる優しい果実身とタンニンをコーティングしているような感じだ。自然派ワインの出発点を味わい、今の玉石混交ともいうべき自然派ワインの潮流を理解できた気がする。しかし妻はこの「アンリ・ジャイエ」は少々苦手だと言う。
そして最後に「シャトー・ペトリュス(Chateau Petrus)1990年」。最初にソムリエがチョイスしていたが、後になって上司から言われたのか「まだ早いのでこちらでどうですか・・」と「シャトー・ル・パン(Chateau Le Pin)1990年」への差し替えを提案してきた?!
「もちろんルパンの1990も魅力的だが、やはりペトリュスの1990でお願いしたい」と伝えると、その若い主任ソムリエも「ですよね!」と、最初に自分がチョイスしたペトリュスのボトルをまた嬉しそうに開けていた。ワインを愛するソムリエの一挙手一投足というのは客にも楽しさを伝染させてくれる。
エノテカ・ピンキオーリの独特のキャップシールの開け方がおもしろい。真ん中をくり取り、クイッと180度ボトルの外に回して垂れかけ、くりとった真ん中部分にコルクを挟み込む。さてその「ペトリュス」・・口に含むと、ヨーロッパの雨上がりの腐葉土、木のイメージがこれでもかと果てる事のない余韻でもって広がる。妻曰く「大きな森を飲んでいるみたい!」これが後10年20年経つとどう化けるのだろうか。そんな想像をするだけでウキウキする味わいだ。数十年後に「ペトリュス」のこのビンテージを開けて味わいの変化を感じてみよう、そんな楽しさを一つもらった。
とにかくどのワインも保存状態が素晴らしかった。日本ではどうしてもダレてしまうのだが、生き生きとワインが息をしている、そんな感じだ。チーフソムリエは「僕が選んだ完璧なリストです。満足頂けましたか」と笑顔も見せずに、最後まで自信満々キリリッと繰り返していた。
食事中、一歩引いた細やかなサービスが素晴らしいソムリエがもう一人付いてくれていた。「エノテーカ・ピンキオーリ」フィレンツェ本店と名古屋店を行き来している吉村順之介さんだ。もう7年もこのレストランにいる。食事後特別に、彼の案内で、まさかの巨大地下ワインセラーを見せて頂く事になった・・・・続く
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