パリ「ル・ブリストル」豪華でLOVEなフレンチ(2)

着席するとシャンパンワゴンが運ばれてくる。フレンチレストランで心躍る瞬間だ。日本ではシャンパンワゴンまで用意できているレストランは数少ないが、フランスの特にホテルのグランメゾンでは豪華な物がきちんと用意されている。
ワゴンを運んで来た若いソムリエールは、穏やかに色々と説明勧めてくれるが、妻の「ピンクがいいわ!」の一言で決まってしまった。フロアの豪華なアールデコの調度品に、赤の椅子やクロスが印象的なせいだ。
現在この「レストラン・ル・ブリストル」は、仏ミシュラン2つ星でエスポワールがついており、3つ星間近と言われる。当然そんなエリック・フレション料理長のメニューに、嫌でも期待感が高まるというものだ。
貝殻の中にウニのフラン、そしてガーリックバッター。ホテル・ド・クリヨンの「レ・ザンバサドゥール」のTVセットを彷彿とさせる。そういえば、このエリック・フレション氏はその「レ・ザンバサドゥール」にいた時代がある。
フランはとても繊細だが風味にたけており、バランスがとてもいい。フランスで頂くフレンチにしては、塩味も抑え気味で自然なスタートだ。緑のムースの下にはフォワグラのムースが隠れている。とても柔らかいが、フォワグラの芳醇な脂のうまみをとじこめている。やはりバランスが絶妙だ。
最後の前菜は「燻製ベーコン、黒トリュフ、ジロールのロワイヤル カルボナール仕立て」。トリュフのブイヨンソースがなければ一瞬、デザートかと見まがうばかり。端にはトリュフのクーリが添えられている。フォークを入れ口に運ぶとトリュフの香り、卵とバターの香りが交じり合いながら鼻の奥へ抜けていく。コース中盤でやや重みのあるプレートに変わってきたのが分かる。
魚は強く勧められたスペシャリテを頂く。ウナギは香ばしくカリカリにポワレされている。パセリのピューレの「緑」、ブイヨンムースの「白」など絵的にも美しい。ムースには薄っすらとニンニクの香り付け。ウナギにはかなりどっしりとした塩がふられていて、舌がややしびれる感じさえする。前半の穏やかな味わいから中盤を経て、更にかなり強い味付けへと変化していく。
ノルマンディ地方出身で魚料理が得意というエリック・フレション氏だけあって、「剛速球」のようなプレート。ただ日本人に馴染みのある「魚の繊細さを残す、うなぎの独特の風味をいかす」という方向性ではなく、「魚の臭みを失くす、うなぎの個性を中和して食感を楽しむ」という方向性なので、日本人の評価は分かれるプレートかもしれない。
そして本場のチーズをワインとともに頂く。輸入とは違う風味と食感、それぞれの個性がはっきりと浮き出る感じだ。こんな時人間自ら飛行機に乗って食べに来る意義を感じずにはいられない。デザートも同様モダンでシンプルなプレートが美しい。妻は「カワイイ、美味しい」と別腹で完食の様子。
超ベテラン風のサービスがゆっくりと優雅にフロア全体を見回しつつ、時折流暢な英語で話しかけてくる。担当の男性ソムリエも貫禄があり頼もしい。他にも若いスタッフがてきぱきとよく動く。楕円形のふくらみのある豪華なダイニングは、心地よい社交のざわめきでとても落着き過ごしやすい。
ただ宣伝に力を入れているためか、日本人客も少なくない。日本を忘れて本場の雰囲気でフレンチを味わいたい人には、やや違和感もあるかもしれない。しかしそれに目をつぶっても頂く価値のある料理だった。
古典に忠実でどっしりした味わいでありながら、現代風のエッセンスもふんだんに盛り込まれている。しかも、コースの流れには緩急がある。まさに「旬のフレンチ」を堪能した。
パリで頂くフレンチには、愛を語るに相応しい、料理、ワイン、サービスと空間がそろっている。その全てのバランスこそが、フレンチの文化であり、フレンチを味わうな幸せなのだと再認識した。
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