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日本料理「稲垣」、お櫛田さんの風に味わう春の夜

0903inag1livarot.gif福岡を代表する和食のお店「稲垣」。博多の氏神様である櫛田神社の隣にあり、博多らしいキリリとした空気の中、博多らしいお料理が頂ける。久しぶりに訪れた今回は、1万1000円のコースを頂いた。
 稲垣さんはいつもながらきりりと礼儀正しく、笑顔で穏やかな接客だ。店内は隅々まできちんと磨き上げられ、清潔感漂うカウンターを中心に清々しい雰囲気が漂う。何より躾が行き届いているのだろう、若手は黙々と、テキパキと作業していて小気味もいい。

 器も美しい椀物は優しい薄味の出汁。焼き目をつけた卵白の下には牡蠣が隠れていて、噛み締めると広がる牡蠣特有の旨みと出汁のバランスがとても柔らかい。
 「きんぎん巻き」は大根のかつら剥きの中に錦糸卵が綺麗に巻き込まれている。柚子の香りがぱっと立ち上がる。いつもながら細かい技術だ。
 何とも華やかな「ミズガレイの一夜干し」は、裏の櫛田神社との間に吹き渡る風で干したという。まさに神様の風で仕上げた縁起物だ。ミズガレイの水分大目のしっとりした身質が、一夜干しによってきゅっと締まり、凝縮された風味豊かな味わいになっているし、カリカリにした背骨部分はおつまみにも最高だ。
0903inag2 「河豚チリ」は可愛い縁起物のひょうたんの器で出てくる。3段になっている優れものだ。「蓮根饅頭」は、すりおろしたレンコンのモチモチの食感が楽しい。帆立も入っており、見た目より食べ応えのある、アイデア豊かな一品だ。

 日本酒は、「菊姫」を冷酒で頂く。柔らかい口あたりから、やがて広がる甘味と旨みのボリューム感がふくよかで、料理の優しい甘味とうまく接着する感じだ。最後はいつもの「ジャコ御飯」で軽く締める。

 博多(九州)の和食は、甘い味付けが続いて後半にやや疲れることも多い。ここ「日本のお料理 稲垣」は、甘い風味を押さえつつ、繊細で素材の風味豊かな味わいを表現している。メインというメインはないまま、ある意味淡々と流れるコースだし、素材的にはうなるものはないため、繊細でありながら季節感と色気にあふれる京料理、豪華な素材を展開する東京和食に比較するとやや見劣りする。0903kusidaしかし、福岡では、アイデア豊かに工夫された料理を、目で鼻で、そして舌で楽しむことができる貴重な店といえるだろう。

 食事を終えて、心地よい春の夜風にあたりながら、裏手にあるお櫛田さんをお参りする。広い境内も人影はまばらで静まり帰っている。そんな静謐な空気の中、山笠の飾り山が豪華にライトアップされていて美しかった。

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