萩城下、北門屋敷の特別室「桂月」で (その2)

山口、萩城下町・旧三の丸毛利家屋敷跡に建つ「北門屋敷」は、三千坪という広大な敷地内に西館・別館・南苑など個性の違う棟に分かれて、多くの部屋があるわ。
今回宿泊した「桂月」と言う特別室は、南苑の一階で、位置的には前回お話ししたフロントの裏側。一番移動が少ない便利な場所になる。皇太子ご夫妻がお泊まりになった部屋と言う事で、当然設備なども期待できるわ。
まず部屋入口玄関は、二重のセキュリティになっていて、鉄の内扉を閉めるとかなりの防音になる。玄関スペースを上がると横には配膳スペースとバスルーム。正面の襖を開けると数畳の和室、その向こうにテラスがあるわ。和室の横には、更に広い応接間で大きな床の間。一体何畳かしら?
その部屋全てを囲むように、部屋専用の日本庭園。正直、フロント前のイングリッシュガーデンより素敵。手入れされた木々、白い玉砂利や池が期待通りの萩風情に合うわ。夜のライトアップはイメージとは違いかなり暗いので、お昼間の景色の方がきれいよ。テラスは庭園に突き出て、窓ガラスは大きく作られている。そこにお茶菓子を用意して頂き、ソファで寛ぎながらしばし庭を楽しむわ。
この部屋で一番気に入ったのは、部屋付の広い露天風呂。庭に面してガラス戸のみ、専用庭を一望出来るベストな位置。人目を気にする事なく深い檜風呂に首まで浸かり、静かに景色を楽しめるのは至福。温泉質は塩だと言うけど、適度な塩加減で私は気に入った。
ところで、ホテルと旅館ではサービスの基本概念が違う。日本旅館のサービスは、ホテルサービスに慣れていると、びっくり愕然とする事も少なくはないの。(もちろん京都の老舗高級旅館は別格で、逆にホテルのどんなサービスも敵わない。) 日本文化独特と言う意味で、西洋文化のホテルサービスと比較するのは酷かと、常々目をつぶってきたわ。地方旅館でも、心温まるもてなしの場合は懐かしさや情も湧く、しかし、いかにも手慣れた中居さんの「客さばき」にも、ある程度時代はもう寛容ではないはず。
「北門屋敷」のフロント関係スタッフは穏やかで丁寧。そこで今回気になったのは「配膳」について。部屋担当は仲居頭風の年配女性、だいたい特別室レベルになると、トップクラスの客室係りが付く。テキパキと手慣れている感じは安心感を与えるわ。
最近、新しく出来た温泉旅館などは、客室での食事ではなく、食堂・レストランでまとめるスタイルが増えているわ。つまり部屋への配膳作業をなくす事で、スタッフの負担やコスト軽減をはかる。しかし、やっぱり旅館は部屋食が理想だし、その為に広い部屋に泊まる(寝るスペースとは当然分けたい)。
今回の話、確かに配膳作業は大変で気持ちもわかる。しかし、最初からお酒も食事も、タイミングを計らずまとめて運ぶ。ただでさえ大量の旅館料理、さしみのツマや器としての芋まで「食べて下さい」はさすがに辛い。仕舞いには、まだ食事中にも関わらず「布団を敷きたい」と言う。広い部屋なのに、エアコンが一台しかないせいで、食事をしているその部屋に布団を敷くと言う。結局、飲みかけのワインを片手にテラスに移動し、デザートはそこに運んでもらった。
仲居さんの早く仕事を終えて帰りたい気持ちもわかるが、こちらのゆっくり寛ぐという目的は叶わない結果となった。「明日のお見送りにはいませんので」との言葉を添えて早々の退散。出発時担当の方の見送りがない事も初めてかもしれない。若干寂しさを感じた(笑)
さて気を取り直して、頂いたお料理について。萩といえばウニやフグ。とは言っても全体的に、至って普通の旅館料理といった感じ。最初のカラフルな御膳と共に出て来た食前酒、この旅館オリジナル非売の「夏みかん酒」。新鮮な酸味が綺麗で甘味もちょうど良く、これは美味しかった。
面白いのは季節ものの白魚。主人は踊り食い(料理とは言えないけど)、私はふぐの白子と共に天ぷらにして頂いた。萩は水がきれいだからか、福岡のしろうおより大きめで透き通っていて元気なの。そしてお肉は、国の天然記念物「見島牛」とオランダ「ホルスタイン」を交配させたという、珍しい見蘭牛(けんらんぎゅう)を朴葉焼き(ほおばやき)で頂く。
ちなみに、色んな都合で朝食を取りに食堂に行けなくても、普通にコーヒーくらいは部屋に運んでくれると嬉しいよね。早いチェックアウト時間も短い売店の営業時間も、システムやスタッフの事情が色々あるとは思うけど、半端にホテル風にするならそこそ、色々工夫して臨機応変に対応できるようになるともっと快適だと思う。
普段使い用のカジュアルな桜色の萩焼きもロビー売店で買ったし、すこぶるお天気もいいし、色んな萩らしい名所を観光しに出発するわ。つづく・・
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