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萩城下で味わう最高の協演 ~あじろ~

0903ajiro1livarot.gif山口県の萩市の美味しいお店と言えば、誰の口からも筆頭で名があがるのが、和食の「あじろ」。この日は春の風が心地よい快晴、腹ごなしに緑豊かな萩城跡・指月公園を散策して、そんな萩の名店に向かった。
 開店当初はオコゼのコース料理を中心に人気を博したそうだが、現在は懐石コースが中心だ。店舗も人気の高まりにつれ順次移転し、菊屋横町近くの今の場所は3店目という。

 美しい中庭を挟んで二つの棟を上手く組み合わせた店舗は、隅々まで磨き上げられて清潔感溢れる。
 入口すぐ左にカウンターがあり、引き戸を閉めるとちょっとした個室のような感じになる。磨き上げられたカウンターの中には一人黙々と作業する貫禄の大将・田中利隆氏、その背後には見事な萩焼たち・・・期待感が高まる。
 おまかせ(15000円)を頂くことにする。前菜は、海老・赤貝・ほたてぬた、かすかな酸味が素材の味わいを膨らませる。
 手毬モチーフで美しい輪島塗りの椀物は、薄く繊細な味わい出汁の中に卵でとじられたシロウオだ。萩名物で旬のシロウオを噛みしめる。大将いわく「シロウオは噛まないと意味がない」ということで踊り食いは出さず必ず手を加えて味わってもらうようにしているそうだ。
 刺身はあじろ得意のオコゼと平目の縁側。春から夏にかけて旬を迎えるオコゼも、初春を感じさせる。脂が少なく淡白ながら上品な味わい、そして優しい弾力のあるオコゼ特有の身質を、美しい酒器の日本酒とともに味わえば、至福の時間が流れていく。

 手毬寿司が素晴らしい萩焼の器に盛られてきた。大将はあーでもないこーでもないと盛り付けに一人思案しながら(笑)、花も一緒に美しく盛り込んでいく。こだわりの美意識が焼き物の本場を感じさせる。
 実はこの器、十一代三輪休雪(現・壽雪)のものという。萩焼の大家の作品をサラっと使う所がにくい限りだ。使いこなされたその器の角々は金色になり味わいを増している。伝説の「休雪白」で心も贅沢に食事を頂けた。しかも店の看板「あじろ」の字は、兄である十代三輪休雪の書という。兄弟で人間国宝という陶芸界の快挙が、「あじろ」ではこんな形で体感できる。

0903ajiro2 旬の筍は、京都で頂いたものに匹敵する繊細な甘さと適度な歯応えを残した柔かさ、そこに爽やかな木の芽が香る。「今の萩では一番の美味しい物で、どんな食材より高価だった」という。
 大きい甘鯛は脂がのっていて、付け合せのレンコンの酸味がアクセント。身が淡白なオコゼは唐揚げによって旨みが引き立ち、やはり酸味の利いた出汁がバランスを奏でる。

 締めはウニの名産地・萩ならではのウニどんぶり。ウニの上に半熟の卵が乗せられ、うにの甘味と磯の香りを殺さず引き出している。赤だしは赤味噌を生かした風味が良く、柚子の隠し味も効いている。デザートのくずきりは、ストレートで柔らかい甘味が懐かしくホッとする。

 漁港らしい新鮮な食材はもちろん、初春という季節感をバリエーション豊かに奏でるコース。萩らしい酢ダイダイを隠し味に使うなど酸味の使い方も特徴的だった。
 気さくに色々教えてくれる実直な大将の人柄が料理や店構えにもあらわれている。こんな和食店が福岡にあれば通うのになぁ・・そう思わせる素晴らしさだった。是非次の季節にも訪れたいものだ。

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