「リスタ・ジョルジオ・ピンキオーリ」京都で芸術的なイタリアンを!
京都は何かしら訪れる楽しみが多い。神社仏閣に京グルメは言わずもがな、秀逸な美術館が数多くあるのも忘れてはいけない。土や緑が多く湿度を含む半端でない京の暑さは、なかなか容易にお寺巡りとはいかない日もある。そんな時にお勧めなのが涼しい美術巡りと言うわけ。承天閣美術館に続き、この日は京都市美術館の「ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画」に行く事にした。
若い頃は近代美術(ウォーホルやダリ、ピカソなど)が好きで、NYにいた頃は当然MoMAに足しげく通ったもの。年齢と共に歴史的な楽しさが実感できるようになると、最近はルネサンス期から17世紀辺りはとっても奥深く楽しい。去年秋にフィレンツェのウフィッツィ美術館で見た「名作の実物」にはとても感動したわ。
ウフィツィと言えばメディチ家歴代の美術コレクションを収蔵する美術館。今回の「ルーブル展」に来ていた作品の中にも、メディチ家からフランス王室に嫁いだ「マリード・メディシスの肖像」があった。豪華すぎる装飾がこれでもかと描かれた大型の作品は迫力。その他ルーベンスやウテワールの宗教画も、実物ならではの輝きと色味は素晴らしいわ。
おっと、前置きが長くなってしまった。この日の本命は美術鑑賞後のお食事。その去年秋にフィレンツェに行った際「エノテーカ・ピンキオーリ」でお会いした吉村ソムリエが、今この京都にいる・・・その注目すべきイタリアンレストランは「リスタ・ジョルジオ・ピンキオーリ(LISTA GIORGIO PINCHIORRI)」よ。
京都北斗(ぽんと)町の川沿いの細い路地に昔ながらの町家風の建物。その外側に上手くガラスを設置した和モダンな造り。この通りは川床を有するスペシャルな、しかも南座が目と鼻の先の場所。ここは「エノテーカ・ピンキオーリ・フィレンツェ(Ristorante Enoteca Pinchiorri Firenze)」のオーナーであるジョルジオ・ピンキオーリ氏が監修するイタリアンレストランだ。
銀座や名古屋の「エノテーカ・ピンキオーリ」とは別資本だが、フィレンツェ本店で7年働き、名古屋店の立ち上げ時にシェフを務めた村田卓シェフが腕をふるう。しかもついこの間まで長くフィレンツェ本店にいた吉村順之介ソムリエがシェフソムリエとして、リッツカールトン大阪ほか全国様々な店から集められたスタッフをまとめあげている。そのサービスはそつなく的確で、そして優しく素晴らしい。
鴨川を眼下に下階には川床(テラス)も見える、京都ならではの素晴らしい景色の半個室で頂いた。
アミューズはナッツなどがいわゆる現代風試験管で供される。グラスワインも充実しているが、「赤」「白」「特別」の3種類のワインリストが楽しい。吉村ソムリエは「フィレンツェ本店ほどではないんですが・・」と謙遜するが、日本のイタリアンレストランとしては文句のつけようのない品揃えだろう。
ピンキオーリの良いところは、イタリアワインはもちろんだがフランスワインも充実していること。ここに揃っている1000種類を越えるワインは、ジョルジオ・ピンキオーリ氏がワインコレクションから持ち込んだものというから期待できる。
この日はその中から「シャトー・コス・デストゥルネル1986年」をチョイスした。
「白いんげん豆と自家製ツナのサラダ仕立て」。ボッタルガ、オリーブアスコラーノは塩味がピッと効いている。「あ~これこれ!」と、一瞬にしてフィレンツェの、エノテーカ・ピンキオーリ本店の味を思い出した。
焼きたてのオリジナルのパンはジャガ芋のフォカッチャなど数種類。トマトのポン・デ・ケイジョは、チーズのネットリとした触感にトマトの風味が生かされた秀逸な出来。岩塩のパンもバランスよくかなり美味い。イタリアンはパスタだけではなく、パンでも明らかに差がでる。
これらに供されたのは、ジョルジオ・ピンキオーリ氏の畑で作られたオリジナルのオリーブオイル。クリアでさっぱりした綺麗な味だ。
「スパゲッティ・アッラ・キタッラ」は固すぎず柔らかすぎずの何とも絶妙な仕上がり。「アルデンテ!」なんて簡単にまとめたくない絶妙さは、さすがフィレンツェ本店でパスタを任されていた村田シェフだ。
身質のよいアサリ、そしてバジリコのペーストとともに、細切りのアスパラガスが、視覚的にも味わい的にもぴったりと合っていた。
ふっくらと仕上げられた「スズキのソテー」はトマト・サフラン・ミントのソースで頂く。シャキシャキとした歯ごたえの三度豆が季節感あふれるアクセントになって気持ちいい。
そして「牛もも肉のタリアータ」。添えられたペペロナータとともに、やや厚めに切られた牛もも肉の旨みが広がる。ラルドのエスプーマを小さなスプーンで頂くと、脂が香りとともに口中に広がるという趣向も楽しい。
日本で食べる牛肉は、フレンチかイタリアンか和食か・・・出処がわからなくなることが少なくないが、完璧にイタリアンに昇華されていた。
フィレンツェ本店の味わいを醸しだしつつ、イタリアンらしさ、そしてバランスの良い美味しさが、京都の素材とともに表現されている。定評のあるパスタはもとより魚・肉・前菜どれも満足。久しぶりに安心して心行くまで楽しんだイタリアンだった。
ワイン・サービス・料理・シチュエーションと4拍子そろった「リスタ・ジョルジオ・ピンキオーリ」。京都で大人が通う価値のあるイタリアンといえるだろう。
まさに「絵画」と「食事」のトータルで芸術を味わうという贅沢な京時間を過ごせた1日だった。
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