俵屋旅館、「京都の夏」を五感で味わう

前回の、日本を代表する京都は「俵屋旅館」お部屋の紹介に続き。今回は文月のお料理を紹介する。
食前酒は爽やかにレモン酒。杯の裏には祇園祭月ならではの長刀鉾の絵だ。先付けは、海老・願寺唐辛子などの南蛮漬け。とても優しい酸味だが、噛みしめると素材の旨みがじゅわっと広がる。
小茶碗は鮑とろろ。生きた鮑をすり下ろし、上には海苔と肝のエッセンスがほんの少し漂っている。夏の暑さに当てられた体を癒して食欲をかき立ててくれる。
刺身は涼しげなガラスの器に盛られた海老の洗いと鱸の焼き目造り。鱸は、日本酒を煮きって薄口醤油で整えたものに梅の裏ごしを付けて、海老は煎りごまの香り漂うごま塩で、鯛はポン酢で、それぞれ頂く。それぞれの風味が味覚を覚醒するような美味しさを引き出している。
素材が新鮮なことはもちろんだが、それだけではない。微妙な焼き目、包丁の入れ方、そして工夫された出汁が調和した上での洗練された味わいだ。
やっぱりそうなるとお酒は、甘いけれどもふくよかで芯の通った「俵屋オリジナルの日本酒」。これを俵屋オリジナルの美しい酒器で頂く。
季節の定番、ほくほくの「茄子饅頭」。箸を入れると中にはウナギが潜んでいた。そうか、土用の丑の日か。日本の四季を感じるというより、季節に包み込まれるのが和食の醍醐味だろう。
焼き物は夏恒例の「笹鮎焼き」だ。運ばれてくると火が入った笹の湯気と香りがフワーッと部屋に立ち込める。この瞬間の幸せが「京都の夏」を感じさせる。
苦み走った鮎の味わいはもちろん、添えられた「たで酢」もまた素晴らしい。普通のさらりとしたたで酢ではなく、凝縮し少しねっとりとした仕上がりになっており、まさにフレンチのソースのような感じ。笹の香りをまとった鮎と素晴らしいハーモニーだった。(ちなみに翌日は「鮎御飯」で更に鮎を堪能した)
わかめとゆかりの 「二色香り素麺」。魚のすり身で丁寧に作られた素麺は歯ごたえ・食感が清々しく、満腹のお腹をさらに広げてくれるまさに「御凌ぎ」だった。
ジューっと音をたてて湯気と共に熱々の「鱧鍋」が運ばれてくる。焼き湯葉、焼葱とともに鱧を頂く贅沢鍋だ。鱧からとった出汁は鱧のエッセンスにあふれている。
何と鍋の底には、太めのくず切りが敷かれていてアクセントになっていた。つるつると楽しく京都らしい美味しさを頂く。鱧祭とも言われる祇園祭の時期に鱧づくしで「京都の夏」を満喫した。
強肴はトリガイ・イカ・ずいきなどをさっぱり爽やかに頂く。お馴染み「泉州水なす」の漬物も欠かせない。穏やかに心地よく「俵屋の夏夜」は更けていった。
付け加えておくと、静けさの中で迎える翌朝の夏の湯豆腐は、また冬とも違って格別に思う。この夜から朝にかけての独特の静かな時は俵屋ならではの幸せだろう。
「夏の京の素材」をふんだんに盛り込みつつ、しかもバリエーション豊かな黒川修功料理長の世界、そして奥深い俵屋の静けさを今回も堪能した。
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