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パリ16区「エトセトラ」、モダンなネオ・ビストロで大人の夜

0910etc1livarot.gif16区と言えばいわずもがな、パリで最も高級な住宅街と称せられるコンザバな区だ。フィリップ・スタルクのデザインで新装した「バカラ博物館(LE MUSEE BACCARAT)」前の小さなエタジュニ広場を横切り、一本入った静かなラ・ペルーズ通りの建物1階(フランスでは0階)。赤が印象的なモダンなレストラン「Etc...(エトセトラ)」がそこだ。

 ミシュラン3つ星「ルドワイヤン」のクリスチャン・ル・スケールの指揮のもと、いわゆる今流行の3つ星レストランの「セカンドライン」「カジュアルライン」にあたる。ピエール・ガニエールやプラザ・アテネなどにいたベルナール・ピノーが腕を振るう。
 パリでは「ネオ・ビストロ」、つまり一流レストランで働いたシェフが、手頃な値段で一流技術のプレートを出すビストロが脚光を浴びて久しい。それに呼応するように、三つ星、二つ星レストラン自体も積極的にカジュアルラインを展開している。ここ「エトセトラ」もそんなコンセプトで2008年4月オープンしたばかりだが、2009年ミシュランで早速一つ星を獲得している。

 入り口、真っ赤な劇場風カーテンが開かれて店内に招き入れられる。入り口左、厨房横にはガラス張りのオシャレな最新設備のワインセラーが埋め込まれてあり、実は2本分の奥行きがあって1キューブに100本ずつワインが収納されているという。
 中央部分をクローゼットとキャシャーにして、周りに窓際・壁際に46席ほどが配置されている。店自体かなり手狭な印象だが、鏡など巧く使って窮屈感を緩和している。
0910etc2 テーブル間隔もかなり狭くちょっとしたカフェスタイルだが、シルバーやダークブラウンに赤の差し色でシックでクールモダンな雰囲気だ。昼はビジネスランチ客中心で、夜はアメリカやヨーロッパ各地から、フランス以外の客が多いという。

 簡単なメニュー構成で、前菜(18€)・主菜(36€)・チーズ(12€)・デザート(13.5€)から好きなものをチョイスする。前菜だけでも主菜だけでもOK。本日は前菜と主菜を頂くことにした。
 前菜を待つ間は、細長いプレートにどんっとバケットが7~8個供される。日本のバケットにはない塩味を強く感じながら、本日チョイスした「シャトー・カントナック・ブラウン(Chateau Cantenac Brown) 2000年(120€)」を味わう。例の入り口の豪華セラー、なんと赤と白それぞれに違う温度で管理されていて今は500本ほどのワインがあるそうだが、ワインリスト自体は見開き1枚のごくごく簡単なもので手頃なワインばかりを配置している。

 前菜「Moelleux doeuf fermier/Creme de champignons」。濃厚な味わいと風味のソースの上に、メレンゲ状の卵白の中に半熟の卵が隠れている。モリーユの香りをまとわせたネットリとした食感を味わう、とてもフランスらしい前菜だ。
 続いて「Anchois Frais Marines/Caviar Dolives」。キャビアを添えた冷たい前菜は、オリーブソースの塩気とマリネされたアンチョビの奏でる心地よい酸味の調和を楽しむ一品だ。妻は「サシミ~」と楽しそうだ。

0910etc3 主菜は「Canard Sauvage/Potimarron」。鴨はジビエらしい野趣ぽさ。日本で食べる鴨はどちらかというと上品だが、いかにも沼地などでたくましく育ったという感じの野生っぽさが、タンニンのまだまだ強いカントナックブラウンと相性抜群。左にはパイ包みの鴨が、右にはびっくりするほど甘いカボチャのピューレが添えられている。
 そして「Noisettes DAgneau A La Sarriette」。子羊のノワゼットは、子羊らしい肉質を生かしてあり、色鮮やかな付け合わせも美味しい。

 力強い素材の味を円の中心に置いて、塩・甘み・酸味をそれぞれドンと周りに配置したような骨太のイメージ。大きなスケール感を持つフランスらしい味わいの数々だった。「日本のおしゃれで軽い味のフレンチビストロ」をイメージして訪問すると違和感を感じるだろう。特に主菜はワインを飲まない女性には難しいかもしれない。

 2名のサービスは暇なときは談笑したり背伸びしたりと、これまた「ルドワイヤン」のサービスとは一線を画したほどほどで最低限の動き。ワイングラスが空いてももしばらく気が付かず、「おっとと」という感じでやってくる。まあいわゆるフランスらしいサービスだが不快ではない。
 帰り際にチップをはずむと、「アリガトーゴザイマシュー」と片言の日本語とともに笑顔をみせる。
 「Epicure Traditionale Cuisine」の頭文字を取った店名通りに、昔ながらのフレンチらしい濃厚な味わいを、ちょっとした現代風のアレンジ・盛りつけで気軽に味わえるカジュアルラインでありながら、素敵なモダンレストランだった。

 月明かりの美しい平日の夜、ひと気ない静かな住宅街の交差点にはタクシーすら通らない。輝く横からのエッフェルを眺めながら、今回の滞在先「フォーシーズンズ ホテル ジョルジュ サンク」まで散歩がてらゆっくり歩いて帰る事にする。今年の晩秋のパリは本当に暖かく心地よい。

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