パリ、ゴージャスな「ル・サンク」で優雅に愛を語る(前半)

さて、パリの話も長くなってきたので、そろそろこの辺で締めに入ろう。今回のパリで最も素晴らしい時間を過ごせたのは、前回紹介した宿泊先の「フォーシーズン・ホテル ジョルジュ・サンク(Four Seasons George V)」、そのメインダイニングである「ル・サンク(Le Cinq)」での食事だ。
2008年秋からは、「ジャマン」「ル・レジャンス」などを経て「レ・ゼリゼ」でミシュラン2つ星を取っていたエリック・ブリファー(Eric Briffard)を招聘している。3つ星も近いのではないかと評価は鰻登り。今回はそんなエリック・ブリファーの料理を楽しみに訪れた。
毎週変わるジェフ・リーサムの「花のオブジェ」で包まれたフロントを抜け(この時期は枯葉のオブジェだったが)、右手進むとラウンジ、その奥に「ル・サンク」の豪華な入り口がある。ゴールドがメイン装飾で華やかかつエレガント、品のあるグレーでポイントを抑えたゴージャスなインテリア。各所の鮮やかな花々がアクセントになっている。まさにこれ以上の贅沢な空間はないという感じだ。
案内されたのは奥のソファー席。その独立した空間は広く静かで、中庭へ続く計算された眺めはデートにぴったりの場所だ。特にこの日は、海外のゲストはVIPらしきイギリス人と私達の2組だけで、後は常連らしいフランス人ばかりだったため、しっとりとした本物の社交場といった雰囲気を味わえた。
ふんだんな種類のシャンパーニュが惜しげもなく冷やされているシャンパンワゴンが運ばれてきた。ちょっと迷ったがせっかくなのでボトルで頂くことにする。ずっしりと重みのあるリストは開くだけで楽しい。
「テタンジェ コント・ドゥ・シャンパーニュ(Taittinger Comtes Champagne)1998年」400€。ブランドブランの透き通るようなエレガントな旨みがここルサンクの雰囲気にぴったりだ。ソムリエも「excellent!」と言いながら楽しそうに注いでいる。
数人のスタッフが替わる替わる挨拶に訪れゆっくりとメニューを選ぶ間にフリットが供される。穏やかな油と塩気、柔らかい触感でコント・ドゥ・シャンパーニュと美味しく頂く。ちなみに、海藻バターですら完成度が高く期待が更に高まる。
まずは3点盛りのアミューズ。カボチャのムースの柔らかい風味、豚バラ肉のちょっとエキゾチックな味わい等が食欲を刺激してくれる。
私がチョイスした前菜は「ブルターニュ産アワビのソテーとホタテ」。エリック・ブリファーの新作スペシャリテの一つだという。日本でも15年働いていたエリック・ブリファーは日本食材も積極的に「ル・サンク」で表現しており、これもそんな一皿だろう。
ソテーした鮑の下にはカボチャとジャガイモを和えたものが敷かれている。海の風味豊かでとても柔らかい鮑とカボチャのネットリした触感の甘みがハーモニーを奏でる。一粒、二粒乗せられた岩塩の塩気と歯ごたえも微妙なアクセントだ。一方の帆立の上にはクレソンのソースとジュレが添えられており、その柔らかい苦みが帆立のジューシーな甘さをより引き立ててくれた。
さらに2種類の付け合わせがまた楽しい。カップに入った鶏のブイヨンスープは軽くショウガが利かせてある。ブイヨンの中には薄く切ったアワビが潜んでおりその食感をまた楽しめるという趣向だ。貝殻の上に載せられたのはホタテ。軽くマリネされているのか風味良いホタテはとても柔らかく、そしてとても甘い。
上品な繊細さのバランスが主素材の味わいを引き立てて、最終的には主素材を主役に躍り上がらせている。日本人にはとても親しみやすい、しかしエレガントな複雑さを持つ完成度の高い前菜で大満足だった。
妻がチョイスした前菜は「ランド産鴨フォワグラのロティ」。1羽分ではないかと思われるほど大振りなフォワグラは綺麗にロティされている。断面には綺麗に火が入りきっているのだが、口にふくむととろけていく。よく中が半生のフォワグラロティに出くわすが、その半生のとろけかたではなく、フォワグラ本来の脂がとろけていくような抜群の火入れだ。そして付け合せのイチジクの甘さとネットリしたソースがアクセントになっていくらでも食べられそうだ。妻は「もうこれからは、他でフォワグラを食べられないわ・・」などと感歎のため息だ。(後半につづく・・)
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