宗像のオテル・グレージュで「レザンファン・ギャテ」原口シェフが燃える

前回にお話したが宗像・神湊までドライブ。海沿いに昨年出来た「オテル グレージュ」のイベントに来たわ。それは代官山「レザンファン ギャテ」の原口広シェフを招いたガラパーティー。レザンファン・ギャテは以前お取り寄せを紹介したわね。
ホテルイベントの場合は基本、しっかりディナーを堪能すべく「宿泊する」ので、早めにホテル入りし、部屋でウェルカムを楽しみながらドレスアップなどパーティー準備をする。この日は寒かったけどテラスに出て、海沿いならではの美しい景色を楽しんだ。ホテル内レストランも景色が素晴らしいと言うので連日ランチは満席らしい。やっぱりお天気の日にドライブついでに来るのがいいわね。
いよいよパーティ開幕。ウェディング施設だけあって広い披露宴会場で行なわれた。金曜日という事もあり、カジュアルな方や近所から来たみたいな方々もいて「ガラパーティー」とはちょっと違う雰囲気。ピアノ生演奏は何故だかMISIA。宗像という場所柄仕方ないのかな・・正装が浮く(笑)
そうこうするうちにお祭騒ぎ的な司会者登場、原口シェフとホテル側の中野シェフが壇上にあがって挨拶。ここで驚く事に両サイドからスクリーンが下りてきた。スクリーンには原口シェフのPVが料理の鉄人ソングと共に放映。ホテル側の発案らしいが、料理の鉄人ソングはかえって原口シェフに失礼な気がするんだけど・・・まぁ披露宴会場ならではの演出。

アミューズは「オマール海老の小さなテリーヌ」から。上のクリームは桜のチップでいぶしており、口の中でふわっとかぐわしい香りが広がる。コンソメスープはギュッとエキスが凝縮した暖かさ。フレッシュコリアンダーをかじるとまた違うアクセントで、食べ手を一瞬にして引き込んでいく完成度の高いアミューズだ。
続いて「テリーヌコレクション」から「ポロ葱、黒トリュフ、地鶏ささ身のマリネのミ・キュイ、ランド産鴨フォワグラのテリーヌ」。モザイク状のデザインが、まさにモザイク状に立体的な味わいを押し広げていき、余韻も深くて複雑。とても色気のある大人のテリーヌだった。
ここでまた照明が落ち、両サイドのスクリーンにいきなり厨房の様子が映し出された。ホテルスタッフを指示する原口シェフが映し出される。一瞬微妙な空気が会場を流れたが(しかもまた料理の鉄人ソングだし)、リアルな厨房はなかなか面白かった。
原口シェフが職人肌で完璧主義なのが分かる。細かい作業まで自分で行い、取り囲むスタッフに緊張感が走っている。こういうフェアーは、レシピだけ渡してあとは手を抜く人もいるようだが、このシェフはとても真面目だ。またグレージュの中野シェフも1週間ほど上京して「レザファン・ギャテ」の厨房に入ったという。このフェアにかけた、関係者の手間暇がきちんとプレートの上に現れていた。
映像を流していたプレートが完成したようだ。照明も復活しプレートが運ばれてくる。「カダイフに包まれた帆立貝」が春菊の緑色をたたえたアサリのブイヨン上に置かれている。バスク地方のエスプレット唐辛子とオリーブオイルのピカントがピリッとした何ともいえないアクセント。添えられたアサリのグラティネもブイヨンと繋いでくれる。これまた完成度が高くとても立体的な味わい。かといって頭デッカチの解かりにくい味ではなく、全体としてまとまりがあって美味しい。
周りのテーブルのフレンチを食べ慣れていないようなお客さんからも「あら、美味しいわねぇ」という声が出ていた。日本ではフレンチ人気がイタリアンほど広がらない。フレンチは様々な細かい作業やテクニックも理解できるのだが、味わいの印象としては「こんなもんか」というプレートも少なくないのが理由の一つだと思う。
客に対して、「フレンチってこんなもんですから、分からないならいいですよ。分かる人には分かりますから」みたいに、押しつけがましく開き直ったように感じてしまうレストランもあるのだ。原口シェフのフレンチはそれと対局にある。きちんと大半の客が喜べる美味しさに着地しながら、現代フレンチのテクニックをまとっていて、目的と手段が逆転していない。
「甘鯛のクルスティアン」は、低温でゆっくりと火を入れられている。だが低温料理で失敗しがちな焦点のぼけた感じではなく、皮はパリパリに仕上げられ、身はフワッと仕上がっている。少量の凝縮したソースは、タプナード・トマト・シブレットなどで、小さな胡桃がアクセントになっている。
ここで、「ピュリニー・モンラッシェ(Puligny-Montrachet)15000円」合わせる。やや若く深みが足りないもののまずまずのハーモニー。
メインは「仔鳩胸肉のロティ」。かなりのロゼの仕上がりが、小鳩の持つ鉄分をまとったような柔らかでいて、味わい甲斐のある滋味を良く表現していた。ただ妻にはロゼすぎて「キツイ・・」と苦手だった模様。
またこのメインが出るまでにかなりの時間がかかっていて(作り直しなどあったらしい)、妻は「こんなに時間が空くと食べられないわ」という愚痴をこぼしていた。これがフェアーの難しさ。
2人だけの食事だと3・4時間は平気だが、フェアーのように第三者と同じ時間を過ごすのは、長過ぎると辛いものだ(特にドレスアップした女性は)。テンポ良く出される結婚式かのような手抜きフェアーは嫌だし、逆に完璧を求めすぎて待たされるのも困るし。万人を満足させるフェアーは意外と難しいものである。
ちなみにメインには、DRCの「ヴォーヌ・ロマネ・プルミエ・クリュ キュベ・デュヴォー・ブロシェ(Vosne-Romanee 1er cru Cuvee Duvault-Blochet) 2002年」を合わせた。10万円だったから現在の市価の2倍を切る感じか。色はかなり煉瓦色だが、ヴォーヌ・ロマネらしいチャーミングな香りはある。
ただ甘みとタンニンのバランスがやや悪かった。開いていないのかなと思っていたが最後まで変わらず。DRCとしての期待ほどの味わいではないのは、1級畑のワインだからやむを得ないかもしれない。
今回のガラディナー、私の点数は80点、妻は65点と評価が分かれたが、ここまで手間をかけたフェアーを実現するのはなかなか大変なことだ。ホテル関係者のやる気とそれに答えたシェフの気持ちが、特に前半のプレートにはちょうど良い塩梅に表現されていた。
やっと出てきた最後のデザートは、これまたテリーヌ型だったりフォンダンだったりと手が込んでいた。長丁場で疲れたという妻を連れて早めに会場を後にする。そして「グレージュの部屋(LA SUITE GRAGES)」に残しておいたルイ・ロデレールを飲みながら、2人ゆっくりと今夜のディナーを振り返った。
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