ジョルジュ・マルソー、「春の祝い」が似合う福岡フレンチ

春到来、卒業に入学に進学、就職に転勤にと何かと集まり事が多い季節。福岡・大手門のフレンチレストラン「ジョルジュ・マルソー(Georges Marceau)」と言えば、今やウェディングや記念日には定番に使われるレストランになった。敷居がさほど高くなく「ある程度で気楽に行ける、しかしちゃんとしたフレンチ」というイメージが人気なのか、この日も幅広い年齢層の団体や家族、落ち着いたカップル・夫婦などで満席だった。
本日も小西シェフのお任せで頂くことにした。まずは「唐津産ナマコ」を利用したアミューズ。ナマコというフレンチには難しい素材にチャレンジし、オマールをひいたダシで優しい味わいにしていてまずまず。
イベントで既にアフタヌーン・シャンパンをしていたため、シャンパーニュはグラスで頂くことにした。最近ここジョルジュマルソーでは、「ラルマンディエ・ベルニエ(Larmandier Bernier)」をハウスシャンパーニュに採用しているという。
「ラルマンディエ・ベルニエ」は、いわゆるRM(レコルタン・マニピュラン)として、とても丁寧な造りで定評がある。このブランド・ブランは、シャルドネのミネラルを上手にいかしつつ、とてもふくよかな余韻。心地よいだけでなくRMらしい腰の強さと熟成感があるので、海の素材(豊富なミネラル分や風味の強さ)が多い「ジョルジュマルソー」の前菜とは接点を探しやすいシャンパーニュだと思う。
シェフお得意の「赤ピーマンのムース」に完熟トマトのジュレ。合わせたバゲットには自家製のアンチョビにトマトが添えられている。見た目にも現代風のプレートだ。
素材の味わいをいかしつつ、アンチョビの塩気がきいてメリハリがある。それぞれの要素を口に運ぶのが楽しく、気持ちが乗っていける前菜だった。いつもより生クリームの量を多めにしたという赤ピーマンのムースが、フレッシュな完熟トマトのジュレやアンチョビの上のトマトスライスなどをかえって生かし、フレンチらしい味わいだった。
2品目の前菜は、「アンコウ」の身を中心に添えて、あん肝にアンコウの皮、唐揚げまども散りばめつつ、野菜類も美しく配置した冷前菜。小西シェフがワンランク上を目指すかのような意欲的な前菜だ。しかも頂いている終盤に青海苔の小さな温スープが提供されるなど、バリエーション豊かにまとめた一品だった。
そして魚は、「白アスパラガスにオランデーズソース」という定番をもってきつつ、表面をカリッと火を入れてふくよかな身質の「カサゴ」。魚貝のソースに合わせてこれまた美味しかった。
メインの肉は「乳飲み仔羊」の背肉のロティール。生後1年までの「仔羊」、その中でも離乳せず草を食べていない「乳飲み仔羊」は春のフレンチならではの食材だ。フランスではポイヤック産かプレ・サレ産が著名だが輸入禁止が続く。本日はスコットランド産という。
繊細ではかないながら、ミルキーで旨みにあふれた肉質をジャストの火入れで提供する。そのフレッシュな味わいは、生後4~5週の乳飲み子羊の姿が目に浮かぶような・・そんな仕上がりだった。ソースも軽いジュ・ド・アニョーにトマトのエッセンスを加え、とても軽やかで春らしい味わい。
これには定番のボルドー・ポイヤックから「シャトー・ラフィット(Chateau Lafite-Rothschild)1997年」を合わせた。最初は繊細というよりも弛緩したような緩い構造が気になる。スパイス、雨上がりのくぐもったような、ほのかな熟成香は綺麗。最後まで極端に余韻が短くスケールが小さいのは、1997年というボルドー左岸には難しかったヴィンテージの限界か。ただラフィットらしい繊細でキメの細かいタンニンは健在で、はかない乳飲み仔羊肉にぴったりだった。
食後酒は、レア物のジャック・セロス「ラタフィア・ド・シャンパーニュ(Ratafia de Champagne)」。チーズは数日前に黒トリュフを練り込んだ熟成したものなどなど、いつもの素材の質と豪快さでの勝負に加え、細かいところまで気配りが感じられる。素材をいかしつつ現代風フレンチの要素もそれとなく探る、小西シェフの向上心が、客側の気持ちを掴んだディナーだった。
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