恒例春の京都、俵屋旅館で満喫する旬の食材

穏やかな日差しに鮮やかに映える青葉、そよぐ風に舞う桜の花びら・・・「日本の春」満開の京都は今年も華やいだ雰囲気に包まれている。お花見が終った後、常宿の「俵屋旅館」に向かう。
スタッフの皆さんの温かな笑顔や「遊楽図屏風」に迎えられ、いつもの「暁翆の間」に入るとやはり気分が落ち着く。「卯月のしつらえ」は仏と花という事で艶やか。京に必ず寄れる場所があることに感謝する瞬間だ。
俵屋旅館の黒川修功料理長の「卯月の料理」も、春の京都を盛り込んだ穏やかでいて香り立つようなコースだった。まずは桜の花びらを浮かせた猪口に、いつものお部屋係さんが笑顔で食前酒を注いでくれる。花びらがパッと開くと気持ちもほどけていくようだ。
先付は鳥貝、うるいの土佐酢掛け、湯葉南部焼き、白魚など美しくも味わい深い数々。小吸物は「帆立白玉の梅香仕立て」。梅の香が鼻の奥から抜けていく。
続いて鯛千利造り。細く切られた細魚、板に載せられた生雲丹も添えられている。繊細な甘さがシャンパーニュとピッタリだった。黒川料理長の料理は繊細な優しい味わいなので、シャンパーニュとの相性は良いように思う。特にブラン・ド・ブランなどぴったりだろう。
椀物は「油目葛叩き磯香仕立て」。桜の柄が浮かんだ美しいお椀だ。下に引かれた姫川豆腐は、細かく千切りにされた新タケノコの穂先がしゃきしゃきとした食感で楽しい。
焼き物は春らしく「子持諸子の木の芽焼き」。琵琶湖特産の子持ちモロコは骨が柔らかくあっという間に口の中でほどけていく。その儚さたるは何とも言えない。木の芽の香をまとわせて甘く焼き上げられたモロコを食べると京の春を感じる。
蕗の葉に包まれた赤貝は「あられ焼き」でなんとも言えない口直し。妻の好きな「粟麩の3色田楽」も、甘く香ばしくて春らしい焼き物だった。
御しのぎはふわふわの「グジの桜蒸し」。まるで桜餅のように品の良い風情。これまた桜の香りがふわーと軽やかに香って美味だった。
そしてメインは、お待ちかね「筍土佐煮 鯛の子、蕗、花山椒」。毎年この時期感じるのだが、京都の筍は本当に格別だ。 京都の筍を食べてからはなかなか他の地域のものでは満足できなくなった。繊細でいながら圧倒的な存在感を鯛の子や蕗とともに味わった。
強肴はほっこり柔らく煮た「蛸に黄身酢」を掛けたもの。甘さ、酸味のバランスの程よい黄身酢が蛸の甘さを引き出していた。
今宵も当然ながら満室という俵屋だが、染み入るような静寂だけが支配している。その中で黒川料理長の描き出す「春の京雅」を満喫した一夜だった。
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