祇園丸山、ピカソに捧げる美しき京都の夏
暑い文月の京都、祗園祭で賑やかな四条通。一歩入って更に京風情ある路地にその「祇園 丸山」はあるわ。丸山の赤い提灯に、祇園祭の幕が華やかな数寄屋造りの入口をくぐると、まず御主人・丸山嘉桜氏のこだわる「水」の玄関を拝見できる。井戸の湧水に光が差し込み濡れた石畳が煌めく、風の突き当りには氷の柱・・計算された自然の視覚的演出。何度来てもここでワクワクしてくる。
御主人は小さな頃は絵かきになりなかったと言う美術好き。作品(料理や設え)のポリシーに加え、色々芸術的視点で教えて下さるのもとても楽しいわ。この日も店に入るや否や丸山嘉桜ワールドに引き込まれて行った。
2階に上がり前回同様テーブルの広いお部屋に通される。まず「よしず」風の扉、15年寝かした葦で出来ている。「良し悪しの語源と言う話もあるんですわ」と御主人。この素材のきめ細やかな柄が特徴、この季節は涼し気でいい。開けると広がる日本美・夏の京都の世界。吹き抜けの庭に面したには水が流れ、笹の葉や風鈴が風に揺れる。
一際目をひくのは縁側に置かれている優美な水槽。一目で素晴らしい木工芸だとわかるそれは中川清司氏(人間国宝)の作品。どうやって硝子をはめ込むかが謎らしい。中には鮎と岩魚が元気に十数匹泳ぎ跳びはねていて(後で食べてしまうのが切ないけど)見た目には素晴らしい涼しげな演出。
床の間の掛け軸やお飾りは、いつも鉄斎や魯山人など言わずもがな歴史的な作家物尽くしで驚かされる。この日の目玉?は、イギリスのサザビーズオークションで競り落とした三百年前の中国の青い器(国産高級車位の値段とか)。深い海に白い水玉が浮かんだようなクリアな美しさ。手に取らせて頂いたが状態も素晴らしい。
この日は昼1人4万円の料理をお願いする。日本家屋の夏の暑さをやり過ごす贅を感じながら食事を頂く。まず「鱧切り落とし」は、タピオカ・梅など色合いも華やかで下には長芋が敷いてある。蓮の葉の器も美しい。一緒に出たのは竹筒に入った「玉乃光」。2日間入れていたという竹香の豊かな食前酒だ。
そして蘇民将来子孫也のお札付き「祇園祭盛り」。丸山氏は「料理は色だ」と言うだけあって、皿をキャンバスに料理を美しく華やかに演出する。笹に包まれた鱧寿司は、フワッと笹の香りがテーブルに広がる。ハモの子の煮凝りはつぶつぶの食感と風味が楽しい。ほおずきの中には細かく刻まれた万願寺唐辛子。
黒漆に豪華な金細工の器の「はも椀」は、さらりとしつつ高貴な出汁の味わいだ。「刺身」はふくよかな鯛、繊細な味わいのアオリイカ、そしてトウスケ(タイスケ)。川を上る前の海でとれた鮭は、ねっとりした脂身が存在感を放つ。 「それでは鮎と岩魚を焼かせて頂きますね」と、若い職人さんが縁側で備長炭を起こし始める。人間国宝・中川氏作の水槽で元気に泳ぐ鮎と岩魚が、一匹ずつ手掴みで取り上げられ丁寧に串刺しにされていく。
「鮎を嗅かがれてみませんか、ウリの匂いがするんですよ」と仲居さん。縁側に近づき、串刺しにされる直前で観念したかのような鮎に鼻を近づけると確かにきれいな匂い。臭みを全く感じない、それどころかスイカかキュウリかと言った感じだ。 暑い庭先で炭をおこして焼く作業は大変なもの。焼き上げられたホクホクの「美山の鮎」は、苦味と甘味が混じり合う複雑な美味しさ(骨は抜かずにお願いする)1匹・2匹目はそのまま、3匹目はたで酢で頂いた。続いて「滋賀の岩魚」がこってりと、そしてふっくらと美味しく仕上がっていた。 丸山氏が中学時に見てインスパイアされたというピカソの「鏡の前の女」。この絵から「平面の中に立体がある」ことを学んだとのこと。素材の味を違和感なく重ね色気ある立体的な味わいに仕立てる料理は、そういった原点から来ているというわけだ。イタリア料理にも興味があるそうで、メディチ家の話なども盛り上がる。 デザートは京都らしい葛きりと桃。炊き立て「はもご飯」の残りはお握りにして、祇園祭団扇や調味料などと一緒にお土産で頂いた。 美術や歴史などすっかり話し込み長居をしてしまい、タクシーに乗り込むその瞬間まで話も尽きない。彼の言う五感(リズム・光・音・香・味)で「祇園丸山」を存分に堪能し、名残惜しみつつ「真夏の京都」をあとにした。
こちらは日本酒だけでなくワインリストも充実していて、この日はシャンパーニュ「ボランジェ(Bollinger)1万円」をチョイス。後半は前述の「祇園丸山特別竹酒・玉乃光 特別純米吟醸(4合1万円)」を頂く事にする。
さらに「アラのしゃぶしゃぶ」が登場。三角形の氷器の上に、ぷりぷりしたアラの身とウリが載せられている。軽く暖かい出汁にサッとくぐらせて頂く。
「10キロを越えると幻と言われるアラですが、13キロの良いのが入りましたので、今日はお出ししました」と挨拶に来られた御主人・丸山氏(途中に女将さんも美しい空色の着物で)。
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