代官山「リストランテASO」、花の邸宅で陽気なイタリアンを楽しむ
大使館やセレクトショップが建ち並ぶオシャレな旧山手通り。そこに面した「カフェ ミケランジェロ」が目印、夜も周囲を明るく照らして雰囲気があるわ。雨の中車を付けると、スタッフがサッと出て来て傘をさして迎えてくれる。細やかなサービスが嬉しい。そのオープンカフェの中を横切り進んだ奥が、今夜のディナーを楽しむ「リストランテASO(Ristorante ASO)」。

ひらまつグループの阿曽達治氏率いるイタリアン部門、東京ミシュランでも2ツ星を獲得していて今や日本を代表するイタリアンレストランとも言えるわ。春に支店である銀座「アルジェントASO」に伺って楽しかったが、こちらは代官山にこの広さで全く趣が違う建物と雰囲気。
この建物はなんと昭和初期に建てられた一軒家を改造したもの。それを間取りや骨組みは変えずに、ちゃんとイタリアの田舎の邸宅風に造り上げているのは素晴らしい。ダイニング間の不自然な段差があるにしろ、窓や階段など古さを生かして回廊なども上手く仕組んでいる。

案内された席は1階メインダイニング(2階にはダイニングと個室)の窓際、テラコッタな中庭が良く見える素敵な場所。スタッフが皆で手入れしているという美しい花々がたくさん並んでいて、料理にも登場したミニトマトやハーブなども植えてある。夜であってもしっかりライトアップされて良く見えるわ。
中庭を挟んだ向こう側には、広々としたガーデンサロンと更に広い屋内サロンがあって、ウェディングに人気のレストランと言う事が良くわかる。こうやってゆっくり建築を見ていると、いかに元々あったのが素晴らしい邸宅だったかと思う。聞けば元の持ち主は時々ランチなど食事に見えると言う事なので、原型を維持した上で美しく進化したこの現状にきっと満足してらっしゃるのね。

まずは「ドゥラモット(Delamotte)」のグラスシャンパーニュを頂きながらメニューに目を通す。相変わらずフレッシュで存在感のある酸味に、上質な旨みを感じさせるミネラル感のバランスが良い。「Menu C」の定番スペシャリテコースにしようと思ったが、少量で色々な料理を楽しめるというお勧めの「Menu B」コースをチョイスする。
「トマト 3種類の調理法で」。プチトマトが隠されたシュー、そしてはずしたグラスにはトマトのスープが注がれる。フレンチで良く見るようになったデクリネゾン(変化)のプレートのように、異なる表現法でトマトを味わう趣向で気持ちが引き込まれていく。盛り付けも金飴包状態などユーモアがあって楽しい。

「松茸と穴子のリゾット」。米は日本人に合いやすいように静岡のミルキークイーンをあえて使用しているという。下から吹き出す松茸の香り、穴子のこってりした風味、そして芯を残しつつ刻んだ松茸の入ったリゾットは三位一体の美味しさ。松茸のダシとドライアイスでモクモクと湧き上がる松茸の香りと煙の演出はさすが。
「薫製にしたフォワグラのテリーヌ」はこれまた煙の演出で、鴨のフォワグラを杉の香りでさっとスモークしてある。周りに添えられたハチミツ・アプリコット・マーマレード・ガレットなどを好みで添えて頂く趣向だ。「フォアグラのソテー パルメザンチーズ」、こちらは鴨フォワグラをソテーした一品でチーズの風味が漂いとてもイタリアンらしい。
合わせた白ワインは、シャブリで最も古い造り手のひとつであるレニャーの「シャブリ・グラン・クリュ・ヴァルミュール(Chablis Grand Cru Valmur) 1989年」。とろりとした甘みを感じさせる蜜の香り。アタックから余韻までしっとりした果実味と上品な酸が絡み合う。
「夏野菜と様々な貝のスパゲッティ」は、お馴染みのグラス入り温パスタをかけるタイプで、ビーツの色が可愛いと妻のお気に入り。定番の「からすみのスパゲッティ」はバジルやホタテなどともにふんだんにからすみがふられている。底にはペースト状の茸が添えられており、混ぜ合わすとふんわりと茸の風味が漂う。

「すずきの香草蒸し」は目の前で蒸される楽しい仕掛け。鉄平石の敷かれたココット鍋の中にすすきの切り身をおいて熱湯を注いでふたがされる。その間にも鍋からハーブをまとった蒸気がテーブルを包む。3分経つと蓋が開けられ、皿にしつらえられていく。ホワイトバルサミコソースで頂くすすきは、フレンチからイタリアンに転身した阿曽シェフらしく、フレンチとイタリアンが融合したような魚だった。
メインの上質な肉は、炭火焼きでジャストに火を入れられソースなしに肉の旨みをストレートに味わうプレートだ。「あぐー豚の炭火焼き」はじゅわっとした脂身としっとりした肉質のハーモニー。そして「熟成和牛モモ肉の炭火焼き」も熟成した上質の和牛を、ASOらしくシンプルに味わう。
合わせた赤ワインは「アンティノリ ソライア(SOLAIA solaia) 1990年」。フィレンツェの「エノテーカ・ピンキオーリ」で飲んだのとちょうど同ヴィンテージ。今宵のはかなり熟成していて、枯葉・腐葉土の熟成香が品良く上質な酸をしっとりと包み込んでいるような感じ。ASOの脂身を生かしたパワフルな肉の仕上がりにはやや負けていたが、美味しく飲めた。

クラッシュアイスに埋もれた「赤ピーマンのムース」(巨大かき氷!?)やアジアン串焼き風な「パイナップルのムースシャーベット」(焼き鳥みたい!?)など、遊び心いっぱいの個性的なプレートが続き、フィナーレのブーケスイーツまでしっかり盛り上げる。
楽しさと美味しさが味わえるイタリアンのASOブランド。料理やインテリアの演出同様、サービス陣も皆さん明るく会話も楽しめる。来年9月には、「アルジェントASO」的なモダンなスタイルで博多(福岡・天神)にも開業される。来年がますます楽しみになった。
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