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シャンパーニュ「アンリオ」新当主トマ・アンリオ祭 EdiTion Koji Shimomura

101101henriot1livarot.gif「アムール・ド・ドゥーツ(Amour de Deutz)」「ウイリアム・ドゥーツ(William Deutz)」「テタンジェ コント・ド・シャンパーニュ(Taittinger Comtes de Champagne)」「ローラン ペリエ アレクサンドラ ロゼ(Laurent Perrier Alexsandra Rose)」「ポメリー キュベ・ルイーズ(Pommery Cuvee Louise )」「エグリ・ウーリエ ブランドノワール(Egly Ouriet Blanc de Noir )」などなど・・好きなシャンパーニュは数多あれど、やはり外せないのがこれ、「アンリオ・キュベ・デ・アンシャンテルール(Henriot Cuvee Des Enchanteleurs)」だろう。

 約200年の歴史を持つ家族経営のメゾン「アンリオ(Henriot)」が作り出す清楚かつ色気あるスペシャルキュベだ。「果実味あふれたフレッシュさ」と「丁寧に熟成した味わい」、双反する要請を見事に調和させている。
 レストランでも「アンリオ」がオンリストされていると凝ったイメージが浸透してきたのは、約10年前に社長に就任し積極的な販売路線とイメージ戦略を展開した12代目スタニスラス・アンリオ(Stanislas Henriot)氏の功績だろう。そのアンリオの当主が弟のトマ・アンリオ(Thomas Henriot)氏に交代した。フランスの新聞記事によれば「メゾンに新しい風を吹かせるために」と報じられていた。

 そんな13代目の若きトマ・アンリオ氏を迎えてこのほど「エディション・コウジ シモムラ(EdiTion Koji Shimomura)」でガラ・ディナーが開催された。昨年に引き続き2度目だがトマが主賓になるのはもちろん今回が初めて。入り口にはトマ・アンリオ氏が立って客を出迎える。とても若々しいが貴公子然とした感じは「アンリオ」の酒質を彷彿とさせる。

101101henriot2 まずは、フレッシュな洋梨のニュアンスの感じられる「アンリオ・ブラン・ド・ブラン(S.A Henriot Blanc de Blancs)」を食前酒で頂くうちに、下村浩二シェフが大がかりな仕掛けを抱えながら登場する。満面にはいたずらっ子のような笑み。いわゆる「ピュピトル(pupitre)」をイメージしたアミューズブッシュの演出に皆拍手だ。
 シャンパーニュは1次発酵のあとに酵母と蔗糖をくわえて瓶内2次発酵を行う。その酵母の死骸である澱は、「ピュピトル」という穴の開いた2枚の板を山型に合わせたものに、ボトルを下向きに入れ2~3か月かけ少しずつ動かすことによって、ボトル口に集められる(ルミアージュ)。集められた澱は、瓶口を瞬間冷凍するなどして取り除かれる(デゴルジュマン)。

 そのピュピトルをイメージしたアルミ製の物体に、ボトルに見立てたスプーンを立てかけているのだ。下村シェフの手作りというから驚く。スプーンには「澱」ならぬ「シェーブルとあんずのジュレ」。シェーブルの優しい風味と杏の優しい甘みを感じながら、「アンリオ・ブラン・ド・ブラン」を口にすると、ガラのスタートにふさわしい優雅で甘美なハーモニーを奏でてくれる。
 続いて下村シェフの
スペシャリテ「牡蠣の冷製」が出てくる。岩海苔の磯の香り、海水のジュレが三位一体となる相変わらず素晴らしい前菜だ。このスペシャリテの完成度にはトマ・アンリオ氏も思わず相好を崩している。

101101henriot3 次は「アンリオ・ロゼ ブリュット ミレジメ(Henriot Rosé Brut Millésimé)2002年」だ。アンリオ好きの我が家もこのロゼは初めて。オレンジピンクの色調にフレッシュな赤い果実香が印象的。セニエではなくブレンドによるロゼだ。「アレキサンドラ・ロゼ」などセニエの方が好きなのだが、このロゼは複雑さはないもののなかなかの味わい。グラスで頂くにはちょうど良い。
 そこに来たのは「フランス鴨のフォワグラのポワレ アンディーヴとレモンのコンフィチュール」。鴨フォワグラのリッチな脂の周りに、レモンの酸味とアンディーブの爽やかな苦みが配置されている。計算され尽くした精緻な味わいには、甘みが控え目で酸味・苦みのバランスが取れている「アンリオ・ロゼ」がぴったりと合った。「酸味が素晴らしい・・一口ですべてがわかる・・」とトマ氏が一番気に入ったのもこのプレートのようだった。

 「セップ茸とアーティーチョークのヴルーテ 佐島産甘鯛と根室産帆立貝」。「水の料理」を提唱して一大センセーションを起こしたブルゴーニュの3ツ星「ベルナール・ロワゾー(Bernard Loiseau、当時「コート・ドール」)で修行した下村シェフは、バター・クリームをほとんど使わない。しかし今宵のこのプレートには「ほんの少しだけクリームを使ってます、ほんの少しですよ!」と言うこと。
 ヴルーテ系のプレートは大好きなのだが、セップなど様々な茸の複雑な土の香りがねっとりからみ合いながら浮き上がってくる感じ。そんな重層感が、フランスで頂くフレンチのような「味わいを重ねた強いハーモニー」を思い出させるプレートだ。

101101henriot4 「ブシャール コルトン・シャルル・マーニュ(Corton Charlemagne Bouchard)2004年」とともに。今宵のパーティーは正式には「Henriot & Bouchard Premium Dinner」と銘打たれている。アンリオが1995年、ブルゴーニュの名門ブシャール社を買収したからだ。ブシャールで販売責任者を長年に渡って勤める西山雅己氏も来訪し、トマ・アンリオ氏の通訳を務めておられた。気さくで楽しい方だ。
 ピュリニー系の綺麗な酸とミネラル感が印象的な「コルトン・シャルルマーニュ」。ふくよかさ、甘美さはまだ出ていなかったため、料理には少し負けていたかもしれないが、澄み切ったピュアな味わいは予想以上だった。

 「シャラン産窒息鴨のロースト 加賀レンコンのクロケット」には、「ブシャール ル・コルトン(Le Corton Bouchard 1500ml)1976年」が合わせられる。本日お楽しみの赤ワインだ。トマ氏のバースデーヴィンテージ(1974年)かと思いきやそうではなく、良いヴィンテージを持ってきたとのこと。
 グラスをはう粘着性はなく熟成のほどを窺わせる。一方色調はとっても強くて34年経過したとは思えない。トマ氏いわく「焦げたタバコ」のような香り。ぐっと焦点が定まって詰まったような果実味は心地よい力強さだ。最後までなかなか開ききらなかったが、それだけ大事に保存されゆっくりと熟成を経たボトルだろう。「もうメゾンにもほとんどなく市場にも出ていません」という貴重な味わいを、エトフェした鴨ならではの奥深い野趣な風味とともに楽しむ。トマ氏も「表面の皮の焼き具合がとても上手だね」とコメントしていた。

101101henriot5 デザートには「アンリオ・ブリュット・ミレジム(Henriot Brut Millésimé 3000ml)1990年」を合わせて。3000mlの特大ボトルから注がれていく。20年の熟成を経た淡い黄金色。そこまでの複雑性はないがシャルドネの落ち着いた優雅さを的確に表現していてスウィーツにはぴったり。
 「キャラメリゼしたフイュタージュ 青森産野バラのハチミツ」、「エディション版モンブラン パッションフルーツのエスプーマ」、「梨のクロカン サフランと柚子風味」ととともに。薔薇・蜂蜜・パッションフルーツ・梨・スパイス・・・熟成したシャンパーニュの酸化熟成香とイースト香との接点をあちこちにちりばめた下村シェフならではの細かく計算されたデザートを満喫する。

 「ピュピトル」というサプライズから始まった今宵のディナーも気がつくとあっという間に22時を越えている。トマ氏も「今回の日本滞在の中で一番楽しく美味しい夜だった」と嬉しそうだ。彼のクールな中にもシャイで優しい人柄を目の当たりにして「王子様みたいね~♪」と妻もご機嫌の様子。「トマはとてもアンリオらしい誠実な当主で、われわれスタッフは本当に慕っているんです」と西山氏が力説していたのが印象的だった。
 当主就任とともに、アンリオのラベルをシンプルに一新したのもトマ氏の英断。「繊細で気配りのできる誠実な人柄」と「時代に流されずメゾンの伝統をひっぱる芯の強さ」。アンリオの酒質そのものに相反する要素を調和させ、周りを引きつける魅力が当主にあるからこそ、創業家として200年以上かかわり続けられているのだろう。

 そういえば夏にシモムラを訪問した際にも「アンシャンテ・ルール 1995年」を堪能したが、待望の1996年も販売開始される。次はいつどこでまた「アンシャンテ・ルール」を開けようか・・・そんなことをつらつら思いつつ宿泊先への途についた。

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