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マンダリンオリエンタル東京 5周年記念「極上ワインと一夜限りの特別メニュー」

livarot.gif秋から冬にかけて都内あちこちの名だたる高級ホテルでは、個性たっぷりの様々なフェアーが開かれる。日にちもイベント内容も目白押し盛りだくさんで目移りしてしまう。例えば、「ザ・ペニンシュラ東京」ではすっかり恒例となった食とワインの祭典「シルク・キュリネール」や、「帝国ホテル」では「ホテル リッツ ウィーク」。「ホテルオークラ東京」も今年はDRCやオーブリオン、パルメなどのガラ・ディナーを展開していた。

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 その中で選んだのは、「マンダリンオリエンタル東京(Mandarin Oriental Tokyo)」の「シグネチャー(signature)」で行われた、『ボルドーの5大テロワールが奏でる、極上ワインと特別料理の饗宴(La grande selection des vins du Bordelais)』と銘打たれた開業5周年記念特別ディナー。こういう企画フェアーは、料理のレベルが高くないとワインだけでは面白くないし、逆に料理が良くてもワインがつまらないとフェアーの意味がない。何かしら新規性や足を運んだだけのお徳感も欲しい。
 その点、値段(1人5万円)の割にはワインの品揃えも良く、「シグネチャー」料理長オリヴィエ・ロドリゲズ氏がこの5年の集大成の料理を実現する、といううたい文句に惹かれてチョイスしたというわけだ。

 まずは、ウニのコンソメにキャビアオシェトラが乗った濃厚なアミューズと共に、「ジョセフ・ペリエ キュヴェ・ロワイヤル・ブリュット(Joseph Perrier Cuvee Royal Brut)」で乾杯。レストランに入る前に部屋で飲んでいた「モエ・エ・シャンドン(Moet & Chandon)」とは全く違って、ミネラル感のスッキリとした味わいがサワークリームで穏やかになったキャビアの塩気と良く合う。

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 1品目の料理は、人参とウイキョウのコンポジションとオレンジフラワーのサバイヨンがかかった、駿河湾産ラングスティーヌのタルタル(Tartare de langoustine de la baie d’Izu, composition de carotte et fenouil aux ecorces d’agrumes, sabayon a la fleur d’oranger)。ラングスティーヌをレモン・ライム・オリーブオイルなどとタルタル仕立てにした一皿。ツメの部分の身も添えてある。
 ソースはオレンジフラワーのサバイヨンの「白」とオレンジの皮で仕上げた「オレンジ」が美しいコントラストで添えられる。かなりレアーな食感、そこに細かくアッシュした人参やカリッとしたクルトンの食感もまとわせている。いかにもシグネチャーらしい爽やかで現代的なプレートだ。

 これには「パヴィヨン・ブラン・デュ・シャトー・マルゴー(Pavillon Blanc du Chateau Margaux) 2001年」が合わせられる。このパヴィヨン・ブランはオイリーで樽の風味を濃厚に感じる。ボルドーのソービニヨン・ブランで感じるフレッシュで柑橘系の味わいとは一線を画す。
 ただ濃厚な香りと反比例して後味は軽やか。個性が強いのでなかなか料理には合わせにくいが、ディルの葉をちらしたり、オイリーな風味を出したりとパヴィヨン ブランとの接点を探った工夫が感じられた。

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 しばらくすると、妖艶な香りがダイニングに立ち込め始める。妻が「これは素晴らしい白トリュフの香りね♪」と目を輝かせる。先日の「ロブションガラディナー」からすっかり白トリュフの魅力にはまっているらしい。そんな中出てきた2品目は、セップ茸のムースにバターでポッシェした地鶏の卵黄が沈み、アルバ産白トリュフがたっぷりかけられた濃厚な一品(Jaune d’oeuf tiedi dans le beurre, mousse de cepe au genievre et noisette, truffe blanche d’Alba)。

 甘くクリーミーでありながら野性味ある芳醇な香りがプレートから立ち上る。セップ茸のムースはねっとりしてセップの奥深い杉の森林のような風味が生かされている。中にはジロールやトランペット、ペエブルーが隠れており味わいを彩る。バターのみで10秒ほどポシェした濃厚な卵黄を絡めて頂くとまたさらに濃厚さが際立つ。
 これに合わせてわざわざ栗のパンが供せられる。トリュフやきのこの濃厚さに栗の風味は負けていてあまり意味を感じないが、シェフのやりたいイメージは良く伝わる。季節感ある、とてもフレンチらしい奥行きのある味わいだった。

 そんなプレートに合わされるのは「シャトー・レヴァンジル(Chateau L'Evangile) 1999年」。2時間半前からダブル・デキャンタージュしていたためだろう、とても柔らかく飲みやすくなっている。酸化鉄土壌からくる鉄分・血の風味はしなやかになり、メルローの柔らかい果実味といい塩梅だ。
 妻は「ボトルを開けたはなの香りも楽しみたかったなぁ・・」などとわがままを言っている。確かにまだ熟成が進んでおらず、熟成からくるトリュフ香や土の香りは出ていなかったため、結局それぞれ単体で楽しむ感じにはなってしまったか。ムルソーあたりと合わせてまた頂きたいプレートだ。

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 続いては、ちりめんキャベツのエチュベとレバーのタルトレットを添えた、ペルドローとフォワグラのオーブン焼き(Poitrine de perdreau de chasse et foie gras cuit au plat, embeurree de choux au laurier,jus tranche et tartine des abats)。フォワグラを包み込んだペルドロー(山ウズラ)をしっとりと仕上げた一品だ。ベルドローは「グリ」ではなく「ルージュ」。
 一般にルージュの方がグリより淡泊な味わいとされるが、このルージュはしっとりと火が入り、繊細に仕上げられていた。ペルドローの淡泊でいて鼻の奥にかすかに残る独特の風味がきれいに表現されていたと思う。特にペルドローの肝臓・心臓などをペースト状に仕上げたタルトレットが、上品な旨みにあふれていて特に美味だった。

 これに合わせられたのは、グラーヴの「シャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオン(Chateau La Mission Haut Brion) 1996年」。こちらもダブルデキャンタージュされていてとてもソフトな口当たり。ラ・ミッションは力強いというイメージがあるため、ペルドローには正直どうかな?と思っていたが、柔らかなアタックからじっくりと広がる落ち着いた果実味の余韻がぴったりだった。

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 そしてメインの赤は、妻の大好きな「シャトー・ラトゥール(Chateau Latour) 1989年」。こちらはデキャンタージュのみされている。ふんわりとドライフラワー、腐葉土の豊かでいて落ち着いた、熟成したポイヤックらしい香りが漂う。大柄でいてスマートな骨格。「あ~、さすがにこれは別格ね♪」と妻も思わず感嘆の声。「レヴァンジル」も「ラ・ミッション」も素晴らしいポテンシャルを持った好きなワインなのだが、こうして並べて飲むとやはり違いが分かってしまう。

 このラトゥールに合わせるは、リドヴォーと黒トリュフのブレゼが添えられた、スパイシーな赤城和牛ロースのロティ。甘くフルーティなボルドレーズで頂く(Coeur d’entrecote de Akagi rotie aux epices noires, celeri rave gratine et les ris braises a la truffe noire sauce bordelaise et fruits )。熟成した赤ワインのトリュフ香を意識してだろう、「リドヴォーと黒トリュフのブレゼ」を合わせるなどよく練られたメニュー構成。ただイチジクやザクロなどを使用したソースはやや甘く若々しいイメージだったので、熟成したラトゥールとは若干かみ合わなかった。肉はペルドローと同様にジャストの火入れで上手で美味しい。

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 最後に出てきたのは「シャトー・ディケム(Chateau d'Yquem) 1994年」。相変わらず「宝石」のようにそれだけで完結しているディケムの芳醇さだ。合わせたデザートは「ポワール・ベルエレーヌ」現代版(Une poire Belle Helene contemporaine)。ショコラとラ・フランスがムースになり、ディケムとの爽やかなハーモニーでディナーが締めくくられた。

 料理・ワインとどれが特に良かったかと言われると困るが、まずまず予定調和的なまとまりをもって、それなりのレベルには達していた。この料理(素材とメニュー構成)とワインのラインナップとしては、他の同価格帯のフェアーと比較してかなり良心的な値付けだろう。各ワインも惜しみない素振りで2杯はサッとついでくれた(できれば1杯で終わらせたいことが見え見えだとガッカリするものだ)。「開業5周年」ということでホテルとしてもかなり奮発したと思われる。

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 若いサービス陣も熟練の加茂文彦ソムリエの指導の下、皆さん穏やかながら一生懸命で好印象。厨房ではオリヴィエ・ロドリゲズシェフが先頭に立ち、かなり細かい作業まで自分で行っている。時々大きな声が響くなど穏やかな見かけによらず、職人肌で気持ちは熱いタイプのようだ。
 「マンダリンオリエンタル東京」開業5周年を祝う「極上ワインと特別料理」は、意外にも静かな空間で、日常のように穏やかに楽しめた晩餐だった。

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