フランス料理 コジマ(KOJIMA)、静かに春を楽しむ夜
博多中心部の端、閑静な住宅地の浄水通りにある西部ガス主宰の「食文化スタジオ」。坂の上に建つ「杉板型枠コンクリート打放し」の壁が眼を引く美しい建物。その2階にあたる場所にあるのが「フランス料理 コジマ(KOJIMA)」。裏にある別入口から入ると、レセプションには壁一面の大きなのワインセラー(赤ワイン専用)。そして西部ガスならではの最新機器を備えた「ガラス張りの厨房」を過ぎ、モダンなメインダイニングに入る。

フロア奥の壁は、パリ・ルーブル美術館の「サモトラケのニケ(勝利の女神)」像をモチーフにしたガラスモザイク画。モノトーンでシックに仕上げられダイニングのポイントとなっているわ。その横にはワインセラー(シャンパーニュや白ワイン用)を仕切りにして個室もある。見上げると低い天井の一部をくり貫いて吊り下げられた照明が目を惹く。形がそれぞれ微妙に違う手作りの「切子ワイングラス」型で、クリアと磨りの2種で雰囲気ある。西中洲にあった「こじま亭」時代とは全く違い、余裕のあるテーブル間隔などクールで落ち着いた大人の空間になった。

まずはシャンパンで乾杯。登場したのはコジマのスペシャリテ、カクテルグラスで供せられる「前沢牛のジュレ」を使ったお馴染みのアミューズ。ウニの海の味わいと牛の深みのある癖のある風味が、おもしろい接点を醸し出す。
前菜は「ホワイトアスパラガスのブラマンジェとオマール海老のサラダ仕立て」。ホワイトアスパラガスのエスプーマとキャビアが添えられる。かなり薄口の味わいだが、オマール海老はトリュフオイル、ビネガーなどとしっとりと仕上げていて、付け合わせの苺の酸味ともよく合った。
2品目は、フグ・アワビ・タケノコなど初春らしい前菜。キノコをピューレ状にしたソースが敷かれている。アワビはかなり固めの仕上げてコリコリと歯ごたえを楽しむ。フグも身の繊細な旨みを活かした仕上げ。プレートに贅沢な季節感もあふれていて、前菜の華やかさを感じられて良かった。キノコのふくよかなソースが滋味深くて、フレンチに綺麗に昇華している。

魚はサッと火を入れた高知産の「金目鯛」。魚の下には北海道産の帆立貝が鎮座し、サフラン風味の黄色のソースがプレートを彩る。プレートの手前にはアクセントのホタルイカ。金目鯛はしっとりとした仕上げだ。ホタテ貝も繊細な火入れで生なところも残しつつピュアな味わい。
ソースで美味しく食べるプレートで、その意味ではクラシックなフレンチだが、余計な手は加えておらず上質な素材の美味しさもストレートに伝わってくる。小島孔典シェフは全国各地から厳選した素材を仕入れることにこだわっているという。派手さはないがバランス良い味わいだった。
ワインリストは相変わらず高い値付けだが、赤ワインは「シャトー・レオヴィル・ラスカーズ(Chateau Leoville Las Cases) 1996年」を選んだ。ドライフラワーに腐葉土の香り、熟成香が少し漂いだしているがまだまだ濃い。重々しい気品にあふれたアタックから果実味と余韻のタンニンがふくよかに広がり続ける。

メインは2種類の肉が供せられる。前沢牛とポーク。生ハムなどに使用される子豚という。エスカルゴを利用したソースに新タマネギも添えられる。こちらもバリエーション豊かに贅沢に供してもらい、楽しくワインとのハーモニーを楽しむ。
食後酒には貴腐ワインの最高峰「シャトー・ディケム(Château d'Yquem) 1998年」のハーフボトルをチョイスする。丁寧に選別されじっくりと時間をかけて作られたこのソーテルヌはいつ飲んでも甘美だ。輝く黄金色、蜂蜜・白い花などディケムらしい華やかな香りが漂う。口に含むと大きい骨格の甘さが生き生きとした酸味とともにエレガントに広がる。余韻はとても長くそれ自体がデザートのよう。合わせたブルーチーズには「白トリュフ漬け蜂蜜」がかけられ、ディケムと相まってさらに風味豊かだった。

サプライズはないが全てのプレートに穏やかな味わいを感じ、客側が安心して食事出来る。博多駅や天神周辺の喧噪から離れて、ゆっくりした時間を過ごしたい大人には居心地の良いレストラン。接待以外にも、女性客・カップル・夫婦などで上手に利用したい。
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