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西麻布「レフェルヴェソンス」、話題の進化形フレンチ

livarot.gif宿泊先の「グランドハイアット東京」からほど近い、西麻布高樹町交差点から入って少し奥まった住宅街。「永平寺東京別院」の向かいに佇む小さなマンションの1階にあるのが、今話題の「泡」という名のレストラン「レフェルヴェソンス(L'Effervescence)」だ。1階と地下部を使ったモダンでクールな造りなのだが、緑を上手く配置して自然に包まれたような温かみある空間演出になっている。

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 こちらの生江史伸シェフは慶応大学を卒業後料理の道に進んだという変り種。大阪「ハジメ(Hajime Restaurant Gastronomique Osaka Japon)」といい大学ほか別のところから転身して料理人になり、フレンチという枠を広げている。この二人は共に「ミシェル・ブラス トーヤ ジャポン」で修行している。生江シェフは加えてイギリスミシュラン3つ星の「ザ・ファット・ダック(The Fat Duck)」でも修行した経験が料理の端々に顔を出す。

 昨年秋に改装オープンしたという店内は、外から見るよりもかなり広々とした余裕ある造り。バーカウンターがあり、片面には半個室も並んでいる。窓から見える木々に加え、切り株柄のカーペットや壁にかけた絵画などでもナチュラル感を演出している。
 ダイニング中央に階段、降りて下にもダイニング、そしてキッチンやトイレなどがある。料理はスタッフがわざわざ下から階段を使って運んでいるからハードだろう(そう言えば「
ひらまつ広尾」も階段は大変そう)。

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 さて、今宵頂くのは「願いと光(Un souhait et la lumiere)」というコース。アミューズは2種類から始まる。まずは「パッションフルーツ、ウイキョウ、越前海老を2口で」。パッションフルーツに越前海老、そして牛乳の泡が三層をなしていて、ウイキョウの香りをつけたリキュール(パスティス)が効いている。生海老の風味がふわりと感じアミューズというより前菜っぽい。そして、液体窒素でマイナス196度に凍らせたマンゴーが添えられる。
 これに合わせたグラス・シャンパーニュ「ピエール・ジモネ(Pierre Gimonnet)」。熟成感を感じさせつつフレッシュな洋ナシを思わせる果実香、そしてしゅわしゅわとした気泡のニュアンスと合っていた。

 2品目のアミューズは「ジ・アップルパイ~こどもの日の思い出(THE APPLE PIE)、仔牛のラグー、フォワグラを3口で」。皿の上にはシェフのメッセージが書かれている。子供の頃食べたM店のアップルパイの思い出、そして火を使い熱々のものを嬉々として食べる人間の味覚の不思議さ。
 その赤い紙箱を開くと、フォワグラ・仔牛のラグーの入ったパイが隠れている。まさに熱々のパイを頬張ると肉汁がじんわりと染み出てくる。なるほどシェフの遊び心にあふれたアミューズだ。サービススタッフとも会話が必然的に弾み、食べてを楽しくさせるテクニック。

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 前菜のスタートは「鮎の炙り焼きと自家製うるかの苦味、西瓜と加賀太胡瓜、香り高いバジル」。和歌山産の鮎が、迫力はないが「飛び跳ねるように」プレートの上に盛られている。瓜の香りがすごく、炙ってしっとりした鮎とうるかの苦味に西瓜の甘み、そしてバジルの風味・・・確かに涼やかさは感じる、しかし何とも言えない味の置き具合。味わいの調和は取れておらず不思議味覚体験といった趣きに、妻も目をパチクリさせている(笑)

 続いてシェフのスペシャリテと言われている「丸ごと火入れしたカブ、パセリのエミュルション、ブリオッシュ」。バターでアロゼしつつ、フライパンやオーブンなど様々な火入れを4時間に渡って行い完成させるという。
 柔らかいかと思いきや外側は原型をとどめていて、フォークにも力を入れて切る感じだ。ところが口に運ぶと熱々のカブの水分がジュワッと口の中にほとばしる。なるほどうまく仕上げている。パセリのソースを軽くからめながら頂く。
 「自分ではスペシャリテと思っていないのですが、皆さんのリクエストも多くて通年工夫して出しています」と生江シェフ。確かに今の時期はどうしても苦味を感じるが、冬にはまた違った甘さ・うまみを感じられそうだ。

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 これには白ワイン「アンリ・ボワイヨ ピュリニー・モンラッシェ クロ・ド・ラ・ムシェール(Domaine Henri Boillot Puligny-Montrachet 1er Cru Clos de la Mouchere) 2007年」をチョイス。軽いキャラメルのような香りがバターでアロゼしたカブと上手く合った。

 次は「夏への誘い」と銘打った「イサキの低速調理、鳥貝と卵のヴィネグレット、小松菜、茗荷、すだちの香り」。しっとり仕上げた大分産のイサキにはすだちを合わせ、その爽やかな香りがふんわりとテーブルに漂う。

 「フォワグラのナチュラル&ピサンリ、ピンクグレープフルーツのチャツネとピンクペッパー、オリーブオイルほのかに香る牛乳ジュレ」。フォワグラはとても柔らかく仕上げている。個人的にはもう少し堅いほうが好きであるがそこは好みだろう。
 赤ワインビネガーと黒糖を使ったというソースは酸が効きすぎていてやや浮いた感じか。「
ハジメ」の洗練されたフォワグラを食べた後だったため、どうしてもややマイナス印象になってしまった。

 さて「右と左で~金宣烏龍茶」。口直しということで小さな烏龍茶が運ばれてくる。右側に熱い烏龍茶、左側には冷たい烏龍茶。思わず妻は「う~ん!??脳みそびっくり!」(笑) ファットダックらしい科学的楽しさも垣間見れるが、やはり好みの分かれるところか。

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 メインは「岩手短角牛サーロインのロティとそのジュ、グリーンアスパラガス、紅芯大根のピュレ、ナスタチウム」。「春の躍動」と名づけられたとおり、短角牛のサーロインをはやりの低温調理ではなく、通常のロティで外型をパリッと中はジューシー熱々に仕上げている。ジュとピュレを混ぜるとまたひとつの別のソースになって味わいのバリエーションを奏でる。硬めに仕上げたアスパラの食感、鮮やかなナスタチウムのハーブ香というアクセントも一筋縄ではいかない構成力を見せる。

 今宵の赤ワインは「DRC エシェゾー(DRC Echezeaux) 2007年」。ワインリストは控えめな値付けでワイン好きには嬉しい限りだ。2007年だから当然若すぎて飲み頃ではないのだが、「オフ・ヴィンテージとは言え2007年はブルゴーニュ思い出年だし、白に続いて今日は2007年デーよ!」と妻に押され、何より5万円という良心的な値付けに思わずチョイスしてしまった。

 通常の2倍という大きなデキャンタで早めにデキャンタージュしてもらい、ゆっくりと急がず時間をかけて味わう(・・はずだったがやはり早いペースに;)。スミレ・ブラックベリーのアロマ。固いが透き通ってすべらかなミネラル、そしてフレッシュでいて軽快なタンニン。余韻は開いていないため短いが気品ある穏やかさ。綺麗に凝縮した果実香がソースと絡めて頂く短角牛とハーモニーを演じてくれた。

 次は、「厳選チーズ」あるいは「時期のお野菜」をチョイスできる。それぞれ頂いた後は「壊したい欲望」という名のデザートが登場。「ショコラノアールをまとって、マスカットとポルト酒風味のレーズン、フロマージュブランのアイスクリーム、野生のミント、P125のシュトロイゼル」。

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 ドーム型のチョコレートをまさに欲望のままに叩き壊すと、中から鮮やかなマスカットやレーズンのグリーン、アイスクリームの黄色が流れ出す。ポルト酒と125%の超ビターな粉砕されたチョコが意外に大人味。そして更に世界で2番目に軽いらしい「軽快なモンブラン」。ハーブティと共に楽しんだ小菓子には、ポップロックが入った「チュッパチャプス」風チョコレートがあって面白かった。

 現代フレンチの範疇だが、バターやソースもそれなりに使うためワインには合わせやすい。香り・食感・温度をとても大切にしているのが伝わる。味は「ザ・ファット・ダック」元スーシェフらしく科学的な面白さ、そして驚きの組み合わせによって、味覚をさまざまな角度から刺激してくる。ただ味全体の印象は、「一つにまとまった昇華した美味さ」にはやや弱いため、「美味しかった!」というよりも「面白かった!」のほうがまだ強いかもしれない。

 客層はカップルや接待、外国人とさまざまで活気にあふれていて、店内には洗練された空気が流れている。独特のコンビネーションを繰り出すその味わいは、万人向けでなく好みは分かれるかもしれないが、今がまさに旬の「東京フレンチ」の一つには違いないだろう。

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