京都「俵屋旅館」、五山後の晩夏を満喫す
夏はやはり京都に来ないと落ち着かない。季節感というものをとても大切して町中が日本風情にあふれる光景は素晴らしい。我が家にとっては「俵屋旅館」への滞在が季節を実感する節目と言おうか習慣と言おうか、とても大切な場所となっている(馴染みのスタッフさん達に会うのも楽しみ)。
さて葉月。フロント入り口には福岡出身の日本画家・冨田渓仙の「紺紙金泥蟹図」を始め、この時期ならではの「朝顔」「蟹」「大文字」がテーマの飾りが館内のあちこちを彩っている。一階図書室に繋がるロビーや部屋には赤い「ほおづき」があしらわれている(ちなみに部屋の掛け軸は狩野探幽「朝顔図」)。
以前も紹介しかたが、俵屋の「夏のしつらえ」はいかにも京都らしい日本の美を体感できて素晴らしい。例えば、談話室アーネスト・スタディには宮脇愛子の「MEGU」や、部屋に向かう廊下には俳人・種田山頭火の「わけいってもわけいっても青い山」などがさらっと置いてあったりする。

そして京都五山送り火を境に更にその「しつらえ」も変化してくる。フロント横には「五山の残り炭」をお供えしているし、中坪庭の蓮の葉も少し枯れ始めて詫び錆びの風情を敢えて表現されている。今年はまたハッキリと気温が落ちて秋の気配を感じる日が続いたので、なおさら過ぎ行く夏の儚さを感じる事が出来た。
そういつもの部屋「暁翠庵」は、一階奥にあり中庭を見渡せるいわゆるスイートルーム(元設計は吉村順三)。竹の濡れ縁と大ガラスの融合が美しい居間が特徴的で、俵屋で最初のベッドがある部屋でもある。
もう数年前になるが、馴染みの部屋がいきなり全面改装されてベッドルーム、加えて庭に向かった書斎スペースができた時にはかなり驚いたし、素直に大喜びしたものだった。数寄屋造りの中にベッドを入れるにあたって、それはそれは試行錯誤されたとの事。
そのベッドルームは寒竹や太鼓襖で書斎と仕切り、室中は土壁の上に韓紙が貼られていて(袋張り)、それはまるで「繭玉の中で眠る」という温かみある空間になっている。
窓の電動唐長スクリーンは適度な斜光、足元からの微かな光で朝を感じるのも心地よい。TV上の壁には前述の「MEGU」同様、宮脇愛子氏ワイヤーな作品がこれまたさらっと飾られている。

そして注目、今年の夏は「およ?!」と思わず声が出たが、真新しい布団類がセットされていた。白く輝くシルクの掛けもの・・それは俵屋オリジナル寝具の新作。細かいデザイン制作まで全てを総指揮する女将が「とにかく肌触りを楽しんで頂きたい」と、繊細さ心地好さを追求したという絹織物と言うわ。
さらさらっと肌を滑りながらも温かみある手触りは、日本の夏ならではの、そして俵屋ならではのこだわりを感じる作品。俵屋のTロゴをアレンジした美しい刺繍、全体を囲む丁寧な縁取りもさすが。そう、また改めて俵屋の進化を睡眠という形で体感する事になった(その他の寝具リネンなどは「ギャラリー遊形」で購入可)。
さて、私からはお待ちかね黒川修功料理長の「葉月のお料理」を紹介しよう。まずはお馴染みシャンパーニュ「ポメリー(Pommery)」で乾杯。
先付けは「雲丹磯部揚げ 枝豆 玉蜀黍寄せ揚げ」「帆立 ずいき花山椒」「養老寄せ 振り柚子」。小茶碗「冷し冬瓜 海老そぼろ 絞り生姜」の爽やかで優しい味わいに、残暑が和らぎかえって夏を儚みたい気分になる。
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