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京都「俵屋旅館」、五山後の晩夏を満喫す

20110831tawaraya1millefeuille.gif夏はやはり京都に来ないと落ち着かない。季節感というものをとても大切して町中が日本風情にあふれる光景は素晴らしい。我が家にとっては「俵屋旅館」への滞在が季節を実感する節目と言おうか習慣と言おうか、とても大切な場所となっている(馴染みのスタッフさん達に会うのも楽しみ)。

 さて葉月。フロント入り口には福岡出身の日本画家・冨田渓仙の「紺紙金泥蟹図」を始め、この時期ならではの「朝顔」「蟹」「大文字」がテーマの飾りが館内のあちこちを彩っている。一階図書室に繋がるロビーや部屋には赤い「ほおづき」があしらわれている(ちなみに部屋の掛け軸は狩野探幽「朝顔図」)。

 以前も紹介しかたが、俵屋の「夏のしつらえ」はいかにも京都らしい日本の美を体感できて素晴らしい。例えば、談話室アーネスト・スタディには宮脇愛子の「MEGU」や、部屋に向かう廊下には俳人・種田山頭火の「わけいってもわけいっても青い山」などがさらっと置いてあったりする。

 そして京都五山送り火を境に更にその「しつらえ」も変化してくる。フロント横には「五山の残り炭」をお供えしているし、中坪庭の蓮の葉も少し枯れ始めて詫び錆びの風情を敢えて表現されている。今年はまたハッキリと気温が落ちて秋の気配を感じる日が続いたので、なおさら過ぎ行く夏の儚さを感じる事が出来た。

20110831gyosui1 そういつもの部屋「暁翠庵」は、一階奥にあり中庭を見渡せるいわゆるスイートルーム(元設計は吉村順三)。竹の濡れ縁と大ガラスの融合が美しい居間が特徴的で、俵屋で唯一のベッドがある部屋でもある。

 もう数年前になるが、馴染みの部屋がいきなり全面改装されてベッドルーム、加えて庭に向かった書斎スペースができた時にはかなり驚いたし、素直に大喜びしたものだった。数寄屋造りの中にベッドを入れるにあたって、それはそれは試行錯誤されたとの事。

 その唯一のベッドルームは寒竹や太鼓襖で書斎と仕切り、室中は土壁の上に韓紙が貼られていて(袋張り)、それはまるで「繭玉の中で眠る」という温かみある空間になっている。
 窓の電動唐長スクリーンは適度な斜光、足元からの微かな光で朝を感じるのも心地よい。TV上の壁には前述の「MEGU」同様、宮脇愛子氏ワイヤーな作品がこれまたさらっと飾られている。

 そして注目、今年の夏は「およ?!」と思わず声が出たが、真新しい布団類がセットされていた。白く輝くシルクの掛けもの・・それは俵屋オリジナル寝具の新作。細かいデザイン制作まで全てを総指揮する女将が「とにかく肌触りを楽しんで頂きたい」と、繊細さ心地好さを追求したという絹織物と言うわ。

20110831tawaryori12 さらさらっと肌を滑りながらも温かみある手触りは、日本の夏ならではの、そして俵屋ならではのこだわりを感じる作品。俵屋のTロゴをアレンジした美しい刺繍、全体を囲む丁寧な縁取りもさすが。そう、また改めて俵屋の進化を睡眠という形で体感する事になった(その他の寝具リネンなどは「ギャラリー遊形」で購入可)。

livarot.gifさて、私からはお待ちかね黒川修功料理長の「葉月のお料理」を紹介しよう。まずはお馴染みシャンパーニュ「ポメリー(Pommery)」で乾杯。
 先付けは「雲丹磯部揚げ 枝豆 玉蜀黍寄せ揚げ」「帆立 ずいき花山椒」「養老寄せ 振り柚子」。小茶碗「冷し冬瓜 海老そぼろ 絞り生姜」の爽やかで優しい味わいに、残暑が和らぎかえって夏を儚みたい気分になる。

 向付は「あこう洗い 火取り鱧 烏賊素麺」。あこうは爽やかな身質、烏賊素麺は品の良い出汁がイカの甘さとぬるっとした食感を生かしている。
 椀は「鰊茄子葛叩き 姫ささげ 針葱」。鰊の濃い目の風味が葛のまろやかさ、上品な出汁と相まって一つの味わいに昇化する。茄子のとろけるように柔らかい食感も何とも言えず良い。

20110831tawaayu

 そして夏の本命と言えばこれ、モクモクと笹の香り芳しい「笹鮎焼き」が登場する。「これを俵屋で頂かない事には夏は終わらないわ♪」と嬉しそうな妻。相変わらず好みな蓼酢とともに頭からぱっくりとかぶりつくと、苦み走った鮎特有の身の旨さと川魚の風味が口いっぱいに広がる。

20110831tawaryori1 今回それに添えられたのは「穴子 木の芽焼き」「粟麩南部焼き」。それぞれ木の芽の香りで、粟麩のねとおりした食感が楽しい。氷に浸された自家製のフワフワ「梅」も甘く熟して美味しい。そしてこれらは「俵屋特製の冷酒」と共に頂く。まさに「鮎」は「京の夏」を五感で堪能する料理と言えるだろう。

 御凌ぎは「湯波焚き」。湯葉の優しい口あたりがとろとろと箸を進めてくれる。揚げ豆腐のピュアな味わい、コリコリした椎茸からしみ出すお出汁、三度豆のしゃりしゃりした食感を柚子の香りとともに楽しむ。
 そしてこの日の「鱧」は「柳川鍋」で登場する。妻も「こうくるか~」と楽しそうだ。ふわふわに開いた鱧に、花山椒が利いた柔らかな玉子が何とも京らしい風味。

 強肴の「海老蓮根 レモン酢掛け」でさっぱりした所でご飯を赤出汁とともに頂く。京都郊外の越畑の棚田で作らせ、毎日精米して届けられるという白米を上品に炊き上げている。ほのかに漬けられた「泉州水なす」と胡瓜もほっとする味わいだ。

 何気ない一つ一つの食材に徹底した細かいこだわりを持つ俵屋旅館・黒川料理長のお料理。彼の誠実で穏やかな感じが表れている。今宵も上品で落ち着いて、疲れがちな夏の体を労わってくれるような料理の数々をじっくりと頂いた。

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