フォーシーズンズ香港「龍景軒」、美味なる広東料理を満喫するキラキラな夜
和食が「京都」なら中華はやはり「香港」。今回の香港の旅はやはり「美味しい中華料理を頂く事」が第一目的である。香港島・中環にあるIFC内「フォーシーズンズホテル 香港(Four Seasons Hotel Hong Kong)」、その4階にある「龍景軒(Lung King Heen)」。ここに来るために今回の宿泊先をこのホテルに決めたようなものだ。
クリスタルが両側に輝いて美しく幻想的なアプローチ、ダイニングはシックモダンの落ち着いた大人の空間が広がっている。「ミシュラン香港」で初登場3ツ星を獲得したこともあるのだろう、ヨーロッパ・アメリカ・韓国・中国など様々な言葉が飛び交っている。
案内されたのはビクトリアハーバーの夜景が美しい窓際の席、眼下にはフェリー乗り場があり急ぎがちに行き交う人たちが見える。20時から約13分間行われる「シンフォニー・オブ・ライツ」も遠くにキラキラと華やかだ。
早速メニューを拝見する。フォーシーズンズの英語サイトのみに載ってる「メニュー(View sample menus)」を事前にチェックしていたが、微妙に違うようだ。陳恩徳シェフのスペシャリテなどお勧めのメニューも別に用意されていた。
コースの「Chefs tasting Menu」も考えたが、中華は好きなものをたっぷりと食べたいということでアラカルトで注文していくことにする。まずは付け出しはカリカリの「ワンタン」クリスピー。フレンチのアミューズのように美しい一品だった。
そして最初は「前菜4種盛り合わせ」。「キクラゲ」はしっとりした優しい味わいにこりりとした歯ごたえが広がる。日本でよく出てくるそれより厚みがあるも繊細な食感だ。
「白身魚」にタルタルソースを纏わせて薄衣でフリットしたものも、ピリ辛がアクセントでアツアツの美味しさ。そしてこってりねっとりしたソースの「チャーシュー」も甘く風味豊かで味わいがいがある。
最後はもっちりフワフワした歯ごたえの衣の中に「海老」など刻まれた甲殻類が潜んでいる・・これもジューシーでなかなか面白く関心しきり。日本で出てくる「中華の前菜」というイメージを覆す味わい。これだけでも十分に腕前を感じる事ができる美味しさだ。前菜盛り合わせは3種から可能だがぜひ4種類をチョイスしたい。
ワインリストをもらい目を通す・・フレンチレストランのような素晴らしい品揃え。ただ5大シャトーなど意外と高い値付けで、円高があまり意味がない感じにも思える。そんな中、比較的手ごろな値付けで、我が家定番お気に入りの「シャトー・デュクリュ・ボーカイユ(Chateau Ducru-Beaucaillou)1989年」4000香港ドル弱をチョイスする。
サービス陣は若者も多いが皆笑顔で積極的に英語で話してくれ感じが良い。中でも担当してくれたソムリエは陽気で親切、デキャンタージュして少し待つ間も「とても良いワインを選んでくれてありがとうございます」と、感想を色々と表現してくれ楽しかった。
さて、陳恩徳シェフのスペシャリテのメニューの中から選んでいこう。妻が特に楽しみにしていた「鮑魚紅焼大群翅」は外せない。
これは何とも贅沢な「フカヒレと鮑の姿煮」という訳だが、つまり丸々1匹の鮑がたっぷり敷かれたフカヒレに乗っている。醤油と鮑の出汁はかなり濃厚で「これはエステ泣かせでしょ!?美肌間違いなしね~♪」と妻は興奮している(笑)
確かに濃厚上質なフカヒレがとろけ込んでいて何とも贅沢な味だ。好みで添えられたモヤシと酢醤油を垂らしつつ頂く。そうそう、スペシャリテの一つ「鮑入りアワビパイ」も食べて見たかったのだが、聞いてみると「これはお昼だけのメニューなのです」と申し訳なさそうに言われる(笑)
更に、同じくスペシャリテの中から「鮑汁扣法國鵝肝」、フランス産フォアグラのアワビソースをチョイスする。フレンチのフォワグラはソテーであれテリーヌであれ、時として内臓であることを忘れるのだが、このフォワグラは鴨の内臓であることをダイレクトに思い起こさせてくれる。その「内臓」の風味に鮑ソースのねっとりと奥深い旨みの味わいが絡み合う。とても濃厚でありながら、オレンジピールの軽やかな風味も余韻に香らせるところはフレンチっぽい。
その「シャトー・デュクリュ・ボーカイユ(Chateau Ducru-Beaucaillou)1989年」。茶かかり始めた赤色。腐葉土や黒土、控えめなドライフラワーのブーケが立ちこめてきて心地よい。余韻が過ぎ去った後にも口の周りにかすかなニュアンスを留める。
グレートワインに共通する余韻を越えた存在感とでもいうべきものがある。サンジュリアンでデュクリュだと中華には少し弱いかなと思ったのだが、凝縮した果実味に骨太のミネラルを感じる味わいが中華にうまく寄り添ってくれた。妻もすこぶる機嫌が良い。
妻が好きな物というと「北京ダック」だ。しかしこれは事前注文が必要と聞いていたが「注文できますよ」と言ってもらえた!一瞬色めきたったが、半羽はなくて「丸々の1羽」になると言うのでさすがに躊躇。すると「とてもビックサイズなので、この流れではちょっと多すぎるでしょう」と笑顔で若いサービスが忠告?してくれたので断念(笑)
それなら「彼の好きな物」を教えてもらおうじゃないかと聞くと、若い彼は即答で「小籠包ですね」(笑) シンプルに勝負できるというのでお願いする。可愛い竹篭でアツアツに出て来たそれは、口の中出汁がはじけて厚めのねっとりした皮と絡み合う。なるほどシンプルに美味しい、好みで合わせる酢醤油とも抜群に合った。
そしてチャーハンは米粉で練り上げた餅のような、柔らかなブロックを重ねた面白い物が出てきた。これはかなり濃厚な強い味付けで少し疲れてしまったが、ふわふわの食感と深い味わいの着地点は、日本では感じられない独特の楽しさがあった。
デザートはスペシャリテから「香芒楊枝甘露」、つまり「タピオカ入りマンゴーミルク、マンゴープリンとザボン」。そしてサービスが勧めてくれた「黒胡麻とココナッツのプリン」の2種。マンゴーはとても繊細で綺麗な味わい。予想していた甘ったるさは全くなくバランスが良いため、食後の胃にもスルスルと収まっていく。胡麻風味のプリンはセサミが濃厚で、上のココナッツのプディングともバランスよく口の中で甘さを押し広げてくる。
ここで担当のソムリエが「これらの食後酒を試してみてください。それぞれのデザートと合わせてみました」と2種類をサービスしてくれた!まずマンゴーに合わせたデザートワインは「トカイ・ピノ・グリ(Tkay-PinotGris)」。淡い黄色の可憐な香りと味わいが繊細なマンゴーにぴったりで妻が「完璧に合うわね♪」とコメントすると、ソムリエも嬉しそうだ。
セサミに合わせてくれた食後酒はトカイに比べてオレンジ色を帯びた色調。香りはジャスミン、ハイビスカスなど南国の花を感じさせる独特のアロマが広がる。初体験の味わいに首を傾げていると、彼は自慢げに「中国物なんですよ」と・・なるほどぉ!
更に「他に注文はないですか?」と聞きに来てくれるがさすがにギブアップ。豊富なメニューに後ろ髪引かれる思いで店を後にした。
日本人に馴染みやすいと言われる「広東料理」の中でも、バランス良く上品な味わい。そこに上質な素材に細かくほどこされた工夫、そして1品ごとに様々な起伏があるので十分楽しめるだろう。色んな面で満足感が高く、是非また来たいと思わせる「レストラン」だった。
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