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鮨 すきやばし次郎、小野二郎氏を独占する贅の極!

livarot.gif宿泊先の「グランドハイアット東京」で、今夜行われる「ジョエル・ロブション来日パーティー」の準備をしている妻がいきなり思い立ったように言い出す、「ね~ね~今からすきやばし次郎の握りが食べた~い!ロブションと言えば二郎さんでしょ?!」。ロブション氏は来日する度に「すきやばし次郎 銀座本店」の鮨を食べに出向いているが、そのことが頭をよぎったらしい。

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 一度言い出したら聞かない妻なので、きゅうきょ電話を入れてみる・・すると何とか予約が入る。バタバタと銀座に向かい、11時30分の開店と同時に入店すると驚いたことに貸し切り状態。しかも小野二郎氏にマンツーマンで握って頂けるという思いもかけない展開になった。妻が横ではばからずキャーキャー言っている(笑) いつものようにお茶でお任せ(1人3万円)を頂く。

 「カレイ」のコリとした食感からスタート。「スミイカ」は一転してすべらかではかない食感。少なめのシャリとともにあっという間に口の中から消える。繊細な甘みが余韻に残る。「イナダ」、そして「赤身」「中トロ」「大トロ」とマグロ尽くしに続いて、「コハダ」。じゅんわりと酢がしみでてきて、余韻にはほんのかすかな点のような苦み、そのまわりに旨味が円を描くように広がる。

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 今回一番よかったのが「蒸し鮑」。ミルクのようなふわっとした香気が広がる。そのクリーミーで上品な海の香りに妻も「こんな鮑は初体験だわ♪」とつぶやく。
 鰺のイメージを越えた「アジ」。やや冷やし気味の身に軽く歯を立てると、いくつかのブロックにほどけ、そして溶けていく。余韻に残る風味は確かにアジなのだが、とても洗練されている。

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 「赤貝」、そして「イワシ」。これもイワシらしからぬ綺麗な味わい。イワシの身の奥にある旨味のエッセンスだけを抽出したかのような独特の味わい。余韻の残り香も印象的だ。そしてドーンと「すきやばし次郎」スペシャリテの一つ「車海老」。甲殻類の風味を感じつつ、弾力がありながら噛み締めがいのある身を口一杯にほうばって味わう。

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 「カツオ」も印象に残る。燻した香りがすばらしい。くどいわけではないが、しっかりと口の中から鼻に確実な存在感とともに抜けていく。余韻がとてつもなく長い。「ハマグリ」は見た目は厚みがないが、口のなかで抜群の存在感を見せてくる。トロリとしながらも決してクドクない甘めの煮詰めが、蛤の旨みと何とも言えないハーモニーを引き出す。

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 二郎氏はこちらの顔つきをちらりと見ながら、その食べるペースに合わせて握ってくれる。そのうち「あうんの呼吸」のように同じペースで時間が流れていく。「味が一個一個明確に違ってネタが引き立っているから、コース料理を食べてるみたいだわ」と妻もご満悦の様子だ。ここで「サバ」が登場。締め具合もよくこれもあっという間に消えていく。口元が自然に洗われる感じ。

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 そして「次郎本店」恒例の軍艦巻3連発だ。たっぷりこんもり盛られた「雲丹」は口のなかでソースのようにシャリと混じりあう。「コバシラ」「イクラ」は初めにぽーんとシャリの塩気を感じる。そこにそれぞれネタの特徴(コバシラのシャキシャキ感、イクラのねっとりした甘感)が海苔の風味と混じり合う。

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 「アナゴ」もツメの程よい甘さとともに渾然一体となる。一通り終わってさらに追加と「玉」。一息ついた頃二郎氏とロブション氏の話になる。「一昨日ロブションさんはに来られてましたよ」との事だった。日仏を代表するミシュラン3ツ星シェフが毎回どのような交流をしているのか興味をそそる。

 握り自体は、昼はよりも若干シャリを少なくしているのかもしれない。夜よりもスルスルと頂けた。また感心したのはシャリの大きさの微妙な変化。ネタの大きさ・食感に会わせて微調整しているようだ。口の中にとどまる時間はそれぞれ異なるのだが、ネタとシャリが一体となって消えていく残像は一緒なのである。

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 二郎氏の握り方は昔ほど超早ではなくなり、ゆっくりとしかし確実な所作を刻んでいる。長男・小野禎一さんがじっと握る手元を見つめているのも印象的だった。長年一緒に過ごした親子であっても永遠に師匠ということなのだろう。

 シャリの味わいはまろやかな酸味がたっていた。凝縮した旨み、煮詰めのトロリとした甘さ、上質なネタの味わいをカバーするにはこれ位の酸味があるからこそ、大きなバランスが取れるのだろう。
 シャリのほどけ具合も気にして見る方だが、二郎氏の握りは気が付くと(いつの間にか)ネタと混じり合っている。ほどけるのでもなく、はじけるのでもない。しっとりでもなく、ねっとりでもない。ネタと渾然一体となったそれは「完成した料理」というべきなのかもしれない。

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 最後はテーブル席に移り、いつものデザート「メロン」を頂く。壁に埋め込まれたショーケースには立派な白磁、これは有田焼人間国宝・井上萬二氏のご子息、井上康徳氏の作品だそうだ。
 そういえばカウンター横のショーケースは国宝級の器が並ぶ中に、9月にスペイン・バレンシアで行われた「お米国際会議(Congreso Mundial del Arroz y Homenage a la Paella)」のモニュメントも飾ってあった(日本代表として二郎氏が金賞受賞)。

 気がつくと12時を過ぎ、次々に客が入りカウンターは盛況を呈している。小野二郎氏は黙々と変わらず目の前の客に向き合い握り続けている。30分に凝縮された濃密で贅沢な時を過ごしたという満足感に包まれて「すきや橋 次郎 本店」を後にした。

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