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エディション・コウジ シモムラ、モダンアートな癒しのプレートたち

20111123shimomura1livarot.gif今月は「トゥールダルジャン東京27周年ガラディナー」や「ジョエル・ロブション来日35周年ガラディナー」とヘビーなパーティーが続いたため、心も身体も軽やかな現代的フレンチを無性に欲する。
 妻の「やっぱり・・・じゃない?!」という言葉で意見がぴったりと一致・・・迷わずチョイスしたのは六本木にあるヘルシーフレンチの「
エディション・コウジ シモムラ(EdiTion Koji Shimomura)」だ。

 ユーモラスで豪快な下村浩司シェフが作り出すプレートは、確かな技術の上に発想の妙と繊細さが融合した「美味しい芸術作品」。今回もどんな美しいプレートが登場するか楽しみだ。
 まずは「3種のアミューズ」、今回は恒例の「ミニバーガー」ではなく新作が登場する。爽やかな「グリーンオリーブ」、オリエンタルなスパイスの効いた「サブレ」。マッシュルーム・チーズなどを閉じこめて揚げたものが重なった黒い皿に映える。

 乾杯はやはりここでは「アンリオ・ブラン・ド・ブラン・ブリュット(Henriot Blanc de Blancs Brut)」が良い。アンリオの爽やかでいて奥深い味わいは、下村シェフの料理には良く合う。特にスペシャリテ「牡蠣の冷製 海水と柑橘のジュレ 岩海苔風味」との相性は格別だ。妻は「これを食べたくて訪れたようなものよん♪」と待ち遠しさを隠せない様子。

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 海水で数秒ポシェした牡蠣の下には牡蠣と岩海苔のムース、上には柑橘を効かせたジュレに岩海苔の粉末。まろやかで奥行きがあり綺麗な酸味が全体を支配している。「海水の中の牡蠣」をほおばっているような錯覚すら覚えさせる。海水のジュレの風味が清らかに広がる。何度食べてもパーフェクトな味わいだろう。

 さらにオーダーするは、妻が「チョコレートムースみたいで大好き」と言うスペシャリテの「冷製ブーダン・ノワールのガトー仕立て」。ブーダンノワールをリッチで滑らかな食感に再構成した一品だ。リンゴとシードルビネガー添えが効いていて豚の血を全く感じさせない。しかも可愛い兎のような盛り付けに進化していてまるでデザートのよう。

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 これもキュートな盛り付けで出てきた「長野産の小兎」。甘味の強い黄人参や紫人参を色んな形で使い、柑橘系を香らせた人参のピューレ(マスタード・葡萄)など、人参のバリエーションにも富んでいる。その美しく繊細な味わいは、まさに人参を食する兎になった気分だろうか(笑)

 さて、魚と肉は秋の新作を頂くことにした。魚は何と「サンマ」を使用したものというから興味津々。サンマの肝など内臓に火を入れた上、トマト・バジルとともにペースト状にして、腹に戻してムニエルにしたものだ。牛乳でふやかした食パンをペーストにまぶすことによって何ともクリーミーにふっくらと仕上げている。このあたりの細かいスキルは流石。

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 サンマの身の回りにうっすらとかぶった微妙な食感も何とも言えないアクセント。餅米を自ら引いた粉で表面に薄い膜を作って食感を出しているという。最近はアユなどにチャレンジするフレンチも増えたが、内臓の苦さ・風味が命の「川魚・青魚」を活かすのはなかなか至難の業だ。結局は、素材の特徴を殺してしまい本末転倒になったプレートも少なくない。
 その点この「サンマ」は内臓をいわば再構成して仕上げているところがにくい。といっても内臓の風味が無駄に際立つわけではなく、ふっくらと仕上がった身の旨さの中に絶妙に溶け込んでいる。

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 付け合わせのウイキョウピューレのかすかに香ばしい苦みがまた味わいを適度に引き締めてくれる。赤ワインとバルサミコを煮詰めたソースも余韻のポイント。「これは新たなスペシャリテ候補だね」などと妻と盛り上がった。
 これにはグラスの白「ムルソー・ブラニー プルミエ・クリュ ラ・ジュヌロット マルトレ・ド・シェリゼー(Meursault-Blagny 1er Cru La Genelotte Martelet de Cherisey) 2004年」を合わせていたのだが、気が付くとワインも必要なく食べきっていた。

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 そして肉は北海道の「蝦夷鹿のグリエ」、骨付きでレアに仕上げてきている。ジュに無花果を少し使ったソースの甘みもはかなくて良い。薄い板状にした黒胡椒が添えられる。鹿と言えば定番のポワヴラードソースの「胡椒」を再構成したイメージだろうか。まるで仔羊の背肉ローストのような雰囲気で仕上げた鹿肉は、その脂と肉の旨みが綺麗に表現されていてとても美味だった。

 付け合わせは「松茸のリゾット」と大きな「松茸」。松茸の香りが口の中で漂いつつ鹿肉の軽い血の香りと一体となる。北海道の大地の茸類を食べる鹿というイメージが食べ手にも広がる。主素材・付け合わせともになかなかの食べ応えであった。鹿肉はなかなか満足することが少なくて積極的にはチョイスしないのだが、妻も「今まで食べた歴代の鹿肉の中では一番の美味しさね」と満足していた。

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 これに合せたグラスの赤は、ロワールの「シャトー・デュ・ユロー ソーミュール・シャンピニー リザガト(Chateau du Hureau Saumur-Champigny Lisagathe) 2009年」。オーナーの娘名「Lisa)」と「Agathe」から取ったという、日本には入荷されていない貴重な物だ。青っぽいピーマンのような香り・・そこから面白い固さが余韻にかけて広がり、ジビエにはうまく寄り添ってくれる。

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 もう一種類はメルローとカベルネ・ソーヴィニヨンが半々の「シャトー・ラリヴェ・オー・ブリオン ペサック・レオニャン(Chateau Larrivet Haut-Brion Pessac-Leognan) 2002年」。シンプルで分かり易い飲み口。

 デザートは2皿出て来る。一つは新作の「バナナ」。これは柚子とマリネしたという不思議な味だ。パッションフルーツのアイスクリームが添えられる。
 そして妻が楽しみにしていたスペシャリテの「カカオのデグリネゾン」。ガナッシュとパウダー状のソルベ、それを黒オリーブとオリーブオイルでさっぱり仕上げている。添えられるカカオウォーターはスッキリとまさに大人のデザートで締めた。

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 「スペシャリテ」と「新作」を交互に頂きかなり満足度が高かった。多様な風味や香りをまといつつ、味のバランスが精緻に取れている現代的な美しいフレンチ。心と体が洗われるような清らかな味わいというべきだろうか。しかも今回は新作がどれも美味で楽しく、予想をはるかに超えた味わいであった。

 そうそう、シンガポール「レザミ」やバンコク「スコータイホテル」などアジアでのフェアーによく招聘されている下村シェフ。最近は国内からのフェアーリクエストも多いようだ。もしかすると来年は九州で「エディション・コウジ シモムラ」に出会える可能性もあり、楽しみである。

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