エンターテイメントな博多寿司「やま中」、大間のマグロで縁起担ぎな楽夜
新年会目白押しのシーズン、やはり縁起が良い華やかで楽しいお店を選びたいところ。そこで真っ先に思い出すのはエンターテイメント性の高い博多寿司を代表する「寿司割烹 やま中」。JR博多シティの大型ダイニングフロア「くうてん」やホテルなど支店もあるが、なんと言ってもやはり薬院にある「やま中 本店」にが良い。客層も福岡の財界人・著名人をはじめ、野球界や相撲界のご常連もお見かけする、前回は某九州最大の博物館館長をお見かけしたが、「やま中 本店」の見どころのひとつはやはり美術、磯崎新氏の設計するモダンな建築。ここはさながら磯崎新プチミュージアムよ。
打ちっぱなしのコンクリートにガラス張りの外観は15年経った今も新鮮で迫力ある佇まい。その中に温かみある自然素材が融合している。天井高の贅沢な造りは会話も気にせずゆっくりと食事をすることができるわ。
艶やかな朱塗りの壁に浮かぶのは、5年に一度は数日休業して特殊な和紙を全て張り替えするという「雲型和照明」。その下には輝く美しい樹齢800年の木曽檜一枚板のカウンターで、いつも20人近くの客がずらりと座って壮観。後ろにテーブル席が5台、特注の白い「モンローチェア」も必見。
すりガラスが美しい廊下を越えて2階に上がると、寿司カウンター付の個室や接待用の大座敷もある。さてこの日はど満席、いつもにも増して賑やかな店内。もちろん私たちは今日も楽しい1階メインカウンター席、威勢のよい掛け声と御主人・山中啄夫氏の笑顔とおしゃべりが楽しい。
まずはシャンパーニュ「モエ·エ·シャンドン(Moet&Chandon)」で乾杯し、いつものようにお任せの刺身からスタートする。ちなみにシャンパーニュは、このモエとヴーヴ・クリコしかないが、妻が「アンリオやボランジェも飲みたいな!絶対合うと思うわ」とわがままなリクエストを出していたから、次は増えていくかもしれない(笑)
博多らしい「アラ」は上質でふくやかな味わい。「平目の縁側」もとても美味で、コリッとした食感の後にねっとりした存在感を示す。「しめ鯖」は適度な締め具合で、穏やかな酸味が青魚の旨みを綺麗に引き出している。
「中トロ」はなかなかの脂身。聞くと築地からひいた250キロほどの大間の鮪という。仕入れ先の札まで見せてくれると客席に思わず笑いが起こる。このあたりのエンターテイメント性がやま中の真骨頂だろう。鮨も高価で蘊蓄を語る分野になったが、江戸時代、その発祥当時は立ち食い・早食いのファースト・フードにすぎなかった。楽しくなければ博多寿司でないというポリシーが好ましい。
ちなみにこの「やま幸」は先日の築地「新年初競り」で、「銀座久兵衛」と香港「板前寿司」連合から依頼を受けて競りを行った仲買業者になる。ここ「やま中」は「久兵衛」とは交流しているというだけあって、何となく醸し出す空気に共通するものがある。
ここでご愛嬌で、なんとモルドバ産の!?という赤いスパークリングワイン「ミレスチミーチ モルドバ・デラックス(milestii mici moldova de lux)」を開けて振る舞い酒、皆さんと乾杯する。「飲み口が良いので試しに少し入れてみたんです」とご主人。ワイン発祥の地を謳うモルドバ共和国「ミレスチ・ミーチ社」は英国王室ご用達の国営のワインメーカーだそうだ。
シュワシュワと心地よいのどごしに妻も「ブドウジュースみたい」と楽しそうだ。これには大間の「中トロの漬け」の、肉のようにトロリとした食感や、漬けによってねっとりした風味によく合った。
「フグ刺」は今朝引いたばかりということで、コリコリの食感を「アン肝」とともに楽しむ。お決まりの「ふぐ白子」に妻もご満悦の様子。これも欠かせない「蟹」も注文。味噌も堪能して「シャンパンに合うわ♪」と更に満足。その他「高麗人参の天麩羅」や「煮あわび」などを日本酒は福井の「黒龍」とともに楽しむ。
握りは「トロ」「コハダ」「ウニ」「白子」などを数貫頂いてしめる。シャリが小さくネタが大きい昔ながらの「博多寿司」。黒酢と米酢を半々に合わせたシャリは、ほんのりと色づいているが繊細な味わい。仕事をほどこさない博多寿司には丁度良い塩梅である。江戸前の「握りのみ」、例えば「すきやばし次郎」の30分で食する握りも好きな我が家だが、ここ「やま中」ではまた違う楽しさを満喫することにしている。
博多らしい明るく威勢のいい職人達、働き者の女性スタッフ陣もいつもながらテキパキと動いている。ここはいわゆる「寿司屋」というより、華やかな「高級割烹」という趣きであろう。デート・接待・家族連れ・女子会・打ち上げ・・様々な客層が思い思いに楽しめる、懐の深い「博多寿司屋」。
つまり寿司屋の狭いカウンターは他の客次第でその日の雰囲気が崩れて台なしになる事もある。これはフレンチレストラン等に比べると寿司屋の弱点でもあり、楽しさでもある。
この点、余裕のある空間でしかも一定以上の客層が多いので、ある意味レストランっぽく楽しめるところも我が家が評価するところ。カウンターでありながら、独立性もあり高級感もあるという点は、もしかして「ラトリエ ドゥ ジョエル ロブション」っぽいのかもしれない(ロブション氏本人も一度来店している)。
「江戸前握り好きの通の方」にはお勧めしないが、凝った酒肴とともにゆっくりと博多の夜を満喫したい場合には最適だろう。今夜も楽しい夜を過ごして帰路に着いた。
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